数寄モノ 石山政義の時空遊泳 その145 春気を感じる画 

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Jiri CHADIMA(ハディマ) チェコスロバキア


鎌倉でも漸く春霞が山河を包みはじめた

朝6時、軒先に出れば眼下に見遣る鎌倉市街、そして鎌倉海岸辺り

薄明りに照らされた白もやが微妙ないろに変化して幻想的な世界を醸し出す

さて、ここに取り上げたる油絵

早朝のモルタヴの河口

薄ピンクの靄が画面全体を覆う

直線的且つ平面的であるが、彼が国立プラハ大学でグラフィックを学んだ所以

しかし、点描(とまではいかないが)と垂らし込みを駆使した柔らかい描法は抒情的で新印象派に近い、とおもう

ところで、東洋には北宗、南宗からの伝統的な米点描法(米法山水)がある

それが日本に渡り、南画として文人墨客のあいだで大流行り

また、浮世絵師でもあった鬼才、北斎、広重等も盛んに描いている

近代では冨岡鉄斎、そして油絵では梅原龍三郎中川一政等が・・・・

その 濃淡、立体、遠近的効果は他の描法とは別もの

画家を目指せんとせば必須の通り道か到達点になるのだろうか

 春とえば、猛浩然の五言絶句の漢詩を思い起こす

春眠不覚暁 処々聞啼鳥

夜来風雨響 花落知多少

漢詩というものはよいものほど単純で無駄がない

尚且つ、直線的、鋭角で歯切れがいい

この詩を諳んじるたびに自然の生業と人間の儚さを感ずる

遥か千年前の詩であるが、蓋し真実 詩!