数寄モノ語り その176 鎌倉古美術商の正月茶事

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花 白寒梅 花入 三島徳利(16世紀)



今年の当山房での茶事を兼ねた居合初抜きは取り敢えず延期と相成った

しかし、そのあとの某美術商の茶事は相変わらず尽きることなく続く

茶事は5時から・・・

午前中は東京へ仕事と年賀状整理

それになんといっても「うさぎやのどら焼き」の仕入

トンボ帰りで鎌倉の店へ

古美術商の暖簾潜ると若主人、父様、母様が挨拶に出てくる

すかさず、阿佐ヶ谷で買った「うさぎやのどら焼き」を渡す

これには大変喜んでくれ、冥利に尽きる

さて、席入りして、以下、道具組をば

床 

 軸 親虎に三匹子供の図(明時代)

 花 西王母椿、桃 花入 竹 一重口

煙草盆桑木に鳴海織部 銀煙管

懐石

 汁 鎌倉豆腐 あおさ 器 漆器 魯山人

先付 ビーフ 銀杏 百合根 器 魯山人作 

向付 中トロ 平貝 鮃 器 織部焼(桃山時代

焼物 鴨 茄子 器 九谷焼(江戸初期)

煮物 蠣みぞれ餡かけ

強肴 山芋 胡瓜の酢の物

飯  ごぼうに牛のまぜ飯

饅頭 白饅頭

酒器 

徳利 祥瑞

酒杯 高麗青磁、刷毛目、斑唐津、黄瀬戸、古伊万里

後座

 床 一睡図 横山大観

水差 南蛮芋頭手(明時代)

茶碗 黄瀬戸筒(桃山時代)替え 赤楽(仁土斎)

以上

で、横山大観水墨画

禅機図をテーマとした四睡図ならぬ、水墨による豊干と虎一匹だけの一睡図

大観らしく、減筆画法を意識した、所謂、一筆画であるが

黒衣を纏い、結跏趺坐の豊干禅師

彼の懐深く入って、静かに寝入ってる虎の姿が一体となった描法が凄い

二つの呼吸が画面から伝わってくるようだ

しかし、これを描いた当時の大観の気持ちや如何に

ときの東京美術学校初代学長であった岡倉天心が主導した

室町時代からの狩野派を中心とした

復古大和絵派、そして琳派等の復興と人材育成の先導役を務め

日本文化伝統の総元締めであった岡倉天心ではあったが

その手法の強引さ(奔放)、将又、日本文化財の海外への放出等と

晩年は政府関係者、学会等の有識者をはじめ

パトロンからも批判され、四面楚歌の体だったと聞く

それでも天心は、日本の歴史と文化の将来を慮り

自分の主義主張を貫いていくことが正しいと・・・・・

一心同体であった大観は、この画でもって

天心が豊干、そして諭された虎は喧しい輩・・・・

しかし、いよいよ彼らとの亀裂はひろがりっていく

その孤立した姿を表した作品が、人物画大作である「屈原

日本文化復活と同時に、その芸術と伝統を世界に知らしめた人物は

岡倉天心が最初で最後ではなかったか

よって、その功績は無限大だ、と考える次第