数寄モノ語り その180 南画家 田能村直入と七福神

久し振りに南画家の絵を買った

金大黒天、銀恵比寿 双副 田能村直入画

ご覧のとおりの金大黒天に銀恵比寿

筆者は田能村竹田の養子、田能村直入

南画は、中国の北宋時代からの技法と描法で

現在でも中国の主流は南画

日本では伝統的な大和絵、住吉派から始まって

室町時代になると大名、寺院を中心に狩野派が席巻

さらに桃山時代からの俵屋宗達を始祖とする琳派

宮中を中心に華麗を極めた

そんななかで元禄時代に中国から、煎茶とともに伝わったのが南画

これが当時の日本の文人墨客に持て囃され、あっという間に一世風靡したわけだ

所謂、文人の仲間入りには南画素養は必須と云われた時代

本題の田能村直入も御多分に漏れず、幕末から明治に掛けての文人画家

っというよりは南画専門家といっても良いのではないか

楼閣山水から田園風景、果ては四君子図までと冨岡鉄斎と並び称され

南画を余すところなく、思いっきり描きつくした画家だった

さて、この作品、おそらくはパトロンならぬ大金持ちの座敷に招かれ

余興でもって即効描きしたのではないか

それにしても軸表具、共箱(筆者の証)、さらには二重箱は貴重なものだ

古から七福神は目出度いゆえに四季を通じて描かれ

床の間飾りには必需品

なかでも恵比寿、大黒天は名コンビとして他の七福神よりも描かれることが多い

,本紙の中心に大判金銀を貼り付け、その上から軽いタッチで描いてるようだが

その生き生きとした動きのある御姿は、

誠にもってそれぞれの特徴を見事に表現した作品

数寄モノとしてこれからの人生におもいを馳せる我が身としては

金大黒天、銀恵比寿の輝きも然ることながら

なんといっても直入が描いて180年経過したにも関わらず

本紙、箱とも状態が頗る良いことはコレクションするものとして

最高に気持ちがいいもの

描いた直入もそうだが、描いてもらった大金持ちの御利益は幾ばくか・・・

いやはや、これらを後世に大事に引き継がせていただく私としては

この作品と旧蔵者との縁に感謝申し上げ

せいぜい精進させていただき、しばらくは綾香らせていただく次第