碧雲山房は雲襄亭主石山政義の時空遊泳にキラリ47

数寄者 碧雲山房主人 石山政義の山シリーズ 蓮華岳その5(その4はこちらから
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早朝 後立山連峰蓮華岳からの遠景 雲海の世界が広がる南方向に穂高連峰がクッキリと小宇宙をつくる 
燕岳を手前に、右から、緊張感漂う槍ケ岳に続いて南岳、飛騨の泣き処、大キレットをさらに左へ追っていくと北穂高、奥穂高、つる尾根を経て前穂高、そして重なってるが手前に大天井、常念岳、そして華麗な蝶ガ岳が望める・・・・いつみてもダイナミックでカッコいい山稜群であり、たまらなく美しい稜線だ。
この山をやったやらないに関わらず一介のアルピニストであれば誰もがこの稜線には永遠の憧れをもつであろうし、嘗ての辛いこと、愉しかったこと等と様々な想いに身を馳せることだろう

ここ鎌倉はやっと秋らしい風が吹き始め、桜の葉も紅葉に向け、いよいよ染まりはじめた。
これからはなにをするのも行動しやすいし、清んだ思考もできるというものだ。
そのひとつ、山もそうだ、ぬけるような秋空を見てるとどうしても山の、あの天を突き抜く山稜と底抜けに深い碧空をみたいという渇望に駆られるから、これはもう登るしかない。
そしてあの岩稜と碧空のうちで己が胡蝶になるのだ・・・・・
それはさておき、いよいよ北アルプス後立山連峰蓮華岳山行の最終章といきたいと存じますンでよろしく。
さて、やっとのおもいで針ノ木小屋に着いた拙僧、なんだかわからんが偶さか屋に加えて怪しげなオバサン二人と共に一晩を共にすることになった。
ところでこの部屋、どうも従業員の寝泊まり処らしい、成る程合点がいった、って先程の黒豚まん親父が板場で話し込んでたのはこういうことだったわけだ。
逆に我等四人はすし詰めから解放されたわけで棚から牡丹餅ってのはこのことか、っと安心はしてられない、チラりと横の二人を、オっと、早速にオバサン二人はなにやらゴソゴソと行動を起こし始めた。
タヌキさん曰く「よろしく御願いしますねエ〜、よかったですよねエ〜、ここ、三畳くらいあるのかしらン、オッホホオー、さっき通ってきたとこは人でごった煮でしたもんねエ、嬉しいわア、キャッキャ」と、なんとなくウキウキしてるではないか。
そのはしゃいでるタヌキさんに拙僧は「一晩よろしくウ〜、よかったですねエ〜、ところで今日はどっからですか? えー!鹿島槍からここまで一日で縦走! そりゃすげえ〜、あたま下っちゃいます、お二人ともその華奢な身体でですかア〜、フエ〜」とおどけて言ったがちょっと褒めすぎだったなア、っと反省。
すると横の相棒キツネ顔オバサン、もはや完全にアイライインが溶けて黒いクマができた薄気味悪い横目で「ちょいと、アンタ、あまりハシャぐんじゃないヨ、こちらの男衆二人に迷惑がかかるじゃないかエ」と自重を促す。
さらに自らの姿格好から逃れたいのか周囲を気にしてなのか「そんなことよりサ、ちょっとアンタも、疲れたでしょ、あたしゃサ、雨だの何んだのとかでネ、綺麗サッパリしたいのヨッ」と言ってザックをズルズル引っ張りまわしてる動きは暗に拙僧等に退出を強要しているのだろう。
ンなことは意に介さないコロコロタヌキ女史、ニコっと笑って「オ〜ホホッ、そうかしらアタシは平気ヨ、でもサ、あなたサ、雨とかカミナリさんが結構あったわよねエ〜、でもやったわよネエ〜」と、また喋りだす。
拙僧が梯子を外すように「ですかア〜、フ〜ン、すごいですネエ、うんうん、じゃ、偶さか屋さん、ここはひとつ下に行って生ビールで乾杯といきましょうや、ヨイショッ、ッとオ〜!」と席をたったものだ。
にしても、あの二人、面白い取り合わせだなア、おそらく人生60年はやってるであろうが人間の、とどのつまりの付き合いというか生き様の縮図を見ているようだ。
まあ、それは兎も角、ビールが実に美味い!部屋に戻るのもなんだし、狭い受付近辺でしばし彼と今日の山行跡を語り合ったものだ。
30分も経っただろうか部屋のドアをノックすると、あの声はタヌキさんだ「はいイ〜、ど〜ぞオ〜」と嬌声。恐る々入ると、予想通り、化け粧の匂いが仄かに鼻を衝く。
二人にそおーっと目を遣るとなんと、例のタヌキ女史はいつの間に受付に行ったのか、小じんまりした身体で生ビールをグビリっと呑んでるではないか。
思わず拙僧「オッ、やってますネエ、イケるんですかア〜、いやはや」っと振る。
すると、白い粉を目の中まで、ってくらいパタパタ叩いたあとも生々しく、オドロオドロ化け直した彼女は待ってましたとばかビールジョッキ持ってススっと寄ってきて「オ〜ホホッ!そーなのヨ、あたしは、これが好きでねエ〜、この一杯がたまらないのオ〜、ッホホオ〜!」とニコニコ笑ってる。
しかし、この年でこんなに笑ってるってのは余程、家庭環境がいいのだろーなア、っと感心。
かたやキツネさん、キッチリとアイラインを入れた姿は針ノ木岳クレオパトラか、ってくらいブ厚く塗った顔して、また横槍ヤリを入れてくる「アンタ、ワタシが呑めないからって、そう頑張ンなくっていいじゃないかエ、ひとさまに迷惑だヨ」っと少しおどけ調だが、あの化け方だけに真顔に見えるから怖い。
が、そうはいっても人間、宴が始まって呑んでしまえばみんな友達、拙僧は焼酎を水で割って呑み始め、その次は日本酒をチビリと回し呑み、だいぶ雰囲気も宴会らしくなった。
拙僧が何回もつついたキツネさんも漸く解れたようで、身の上ばなしなんぞを話だす、彼女は子供の頃から厳しい父親と共に山へ登っていたとか、タヌキさんはそのキツネさんに職場で化かされた結果という。
かたや偶さか屋さんは、とくればあまり山が好きではないらしく、山の達人と不幸にも知り合ったが運の尽きだったとか、様々な話題がわずか三畳のこの部屋では花盛り。
にしても、ブツコラ言っったところで結局、みんな山が好きなのだ、そう、一度でも禁断の果実を知ったからにはどんなに辛くてヤバイ体験しようが、その病は一生続くということを本日も確認した次第。
そして夕食を挟んでの宴は愉しく、消灯近い9時まで続き、明日を目掛けて四人四様それぞれの想いを抱き床に就いたのであった。
さて、昨夜は化かされるのでもなく、ただ、矢鱈にイビキとうわごとが飛び交ったぐらいで無事に一晩を過ごした翌朝、朝食を6時半に終えた拙僧、素早くパッキングを済ませ、行動食片手に蓮華岳へと歩を進めたものだ。
わずかな一望時間だったが雲海を従えて南から南南西へかけて富士山、南アルプス穂高連峰が、東南東には八ヶ岳連峰を確認、そして西側には荘厳なる剣岳を中心に、それを囲むように立山連峰、そして後立山連峰を望むことができた。
しかし蓮華頂上に着いた頃にはガスって、遠景はもはや望めなかったのが残念。
それなりに堪能して小屋に降りてきてみると例のオバサン連がまたまた化粧もあらたにご機嫌だ。キツネさんが言う「おはよー、私達はもう行ってきましたヨ、コーヒー湧いてますがよかったらどぞー」っと誘ってくるもんだからつい乗っちまって一杯馳走になったものの話に巻き込まれないよう、5メートルほど間合いをとったものだ。
小屋に戻り、缶ビールを買い込んで、まずは一服。遅れて山頂から帰った偶さか屋さん、拙僧が促すとさすがに朝っぱらから呑めないようで、三人傍らで呆れ返ってる風。
さて、一服したところで皆それぞれに下山を始め、出陣前の一献ではないが拙僧、最後の一滴を飲み干し、靴紐を締め直してイザ出陣!
下山も得意な拙僧、どんどん高度を下げ、40分もしないうちに雪渓の入り口に到着。アイゼンなんぞ、本来不要であるが、時間稼ぎと偶さか屋さんを気遣って針小屋で借りた次第。
カチャクチャと四本アイゼンを装着、彼にルートを教えて先行させたまではよかったのだが・・・・・
雪渓を下りはじめて、20分ほど経っただろうか。昨日と同じように特有のガスが発生して視界はあまり良くない中を大股で「ザクッ、ジャ、ガツ」っと小気味よい音を響かせ乍ら調子よくヤッてると、なにやら左側前方に5,6人の団体が立ち止まって誰かを介抱しているようだ。
不審におもい、近づいて「どうかしたんですか、こんな雪渓で寝込んだり座り込んだりしてるとマズいことになりますヨ」っと言い乍ら覗き込むと、仲間だろうか、初老の女性が横になってマッサージを受けているではないか。
拙僧はおもわず「こんな雪の上で横になってると身体に悪いですヨ、えッ、20分前から両足が痙攣、治まらない?」と、周りをみるとみんな60才前後で、リーダーらしき男性も路頭に迷っている。
当惑したように「どうしたらよいでしょうか、先程から交代で揉んでるんですが効き目なく、なにか良い方法がありますか、困った・・・」と天を仰いでいる。
拙僧は元気づけるように「とにかく雪渓から逃れることが大事です、どなたか、背負う方・・・・・・」といって見回したが年齢からして無理なはなしだ。
とっさに拙僧は判断、「わかりました、私が背負いましょう。おそらく20分も登れば雪渓は切れるでしょう」と思い切りよく言ったものだ。
すると周りの一人が「エ〜、大丈夫ですか、御願いしていいのですか」っと嬉しさと拙僧を慮る気持ちとが交錯した様子。
また別の仲間連も心配そうに「先を急ぐのでは?でも大変助かります」と、口々に言うが、もうあとへ引きわけにはいかない。
既に自らのザックを安定した雪渓上に確保した拙僧は「大丈夫ですヨ、さあ、そこの方、ザックを降ろして私の背中に乗ってください、それ!」っと雪渓上に四つんばいになった拙僧の背中に女性を乗せたまではよかったのだが・・・・
なんてこった!
物凄げエ重たイー・・・・・巻かれた腕で首が苦しイー・・・・立ち上がれなイー・・・・三拍子揃っちゃったア〜・・・
瞬間、ダメかア〜、っと目の前が真っ暗になったが、ここでコケたら山男が、鎌倉がもののふが廃る、さらに言わせて貰えば居合術者、茶の湯者として、わが聖職である行政書士として、もっといえば世間体が、とか、様々なおもいが走馬灯の如く走っていく・・・
しかし、ここは負けられない、拙僧の人格を担ってる全ての沽券に関わるのだア〜!っと自らに憤怒して鞭を打つ!
大きく息を吸って乾坤一擲「デヤア〜!それエ〜!ダア〜!」っとかわけのわからんことを心中叫んでズヌリっと腰を上げ、中腰状態で雪の傾斜を登り始めたのだった。
一歩、二歩と確実に登っていくのだが二人分の体重でアイゼンが深く食い込み過ぎてしかも雪が柔らかなせいか逆に足もとが滑る。こうなると立っての登りには無理があり、ここは恥も外聞もなく四つん這いで、それこそ大熊になったつもりでのそりのそり、と詰めていく。
しかし、今度は手が悴み、凍ってしまいそうだがどうしようも出来ず、10分、20分と、黙々と距離と高度を稼いでいく。途中、何回も首を締め付けられては後から尻を上げてもらい、漸く雪渓と岩の切れ目が見えたのだった。
ゼエゼエ言いながら岩場に辿り着いた拙僧はゆっくりと身体を斜め横にして患者を降ろし寝かせてあげると、彼女は開口一番「ありがとうございます、なんとお礼を言っていいやら」と拝まれ、泣き出すように「なにを差し上げたらよいのか、この山ではなにも差し上げられず、本当にありがとうございます」とか言っていたが拙僧としては情けないかな、足はガクガク、腰は痛いし、両手は凍って感覚はなしで、ヘナヘナ状態とはこのことだ。
ンなことはおくびにも出さない拙僧、皆からの感謝の嵐のなかで爽やかに「いえいえ、結構ですよ、ここまでくれば安心です、ゆっくり休ませてあげてください。まだ10時過ぎですし、小屋まではゆっくり登っても2時間で着くでしょう、では!」っと言って踵を返したものだ。
そしてやっとコ軽くなった身体を再び雪渓に委ね、颯爽と降っていったのであった。そう、あとの全身筋肉痛、激しい腰痛が待ってるのを知らずに・・・・・
さて、ザックを拾い、くたくたの身体でダラグラ降って、30分も経ったろうか、先行した偶さか屋さんに追いついき、事情を説明すると、彼は拙僧と団体との会話を遠く聞いていたようだった。
拙僧は「いやア〜、大変だったア、じつは・・・」と、ことの顛末を面白おかしく簡単に言うと彼は「ハッ、ハハハッ、そ〜だったンですかア〜、でも、その石みたいになった女性、喜んだでしょう、いやいや、良いことしましたねエー、みんな素通りしていくなかで、出来ないことですよオ〜、大したもんだアー、ハイ!」っと自分のことのようにしみじみと喜んでるではないか。
フ〜ン、この輩、結構、いいヤツじゃん、性格悪くないなア、また、いつ出合うかわからんし、これから拙僧、爺ガ岳登るし、どうせ一服するなら大町温泉郷誘って一っ風呂浴びたらビールでもご馳走してやろうかな、などと考え、アイゼン音響かせ、愉しく針ノ木雪渓を下山していく。
それにしてもあの女性は異常に重かった。力が抜けた人間ほど重いものはないとはこのことだったのだ、ってことがつくづく骨身に沁みた。
あれから1時間は経ったな、あの女性は痙攣も直ってゆっくりと登山を再開していることだろうか。
いやはや此度の山行はいろいろあったなア・・・淡々とした単独行もいいが、こんなアクシデントとか人との出会い、ってやつも久し振りに体験してみると結構愉しいものだ、などと想いながら、へたな歩行法でスタコラと先行する輩を見遣ってはその姿が生ビールと入れ替わってしまうという自らの本能の浅ましさに呆れ返り乍も、一人悦にいってる拙僧なのであった。
 ―完―

いかがでしたか、茶の湯、居合、山に古美術という数寄者の世界は。今後、当職の聖職である行政書士としてのキラリ日記を挟み乍ら思うが侭につづっていきたいとおもいますので楽しみにしていてください。

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