碧雲山房は雲襄庵主 石山政義の時空遊泳 鎌倉の四季3


於拙僧碧雲山房内 早朝、東側門から階段を48段ほど上り、右に曲がるところのゆるやかな左側斜面に咲く寒椿
朝陽の光りが眩しいが、その光りの陰陽さのせいか花の紅さが一段と冴えている

さてと、1月31日11時よりの茶事に馳せ参じ仕り奉り候、ってことで、三時間に及んだ正月茶事は、和やかなうちに御開きと相成りました。
先にも述べましたが、この老舗美術商の姿勢、視点と顧客に対する細やかな配慮、っていうことに関しては、他の追随を許さない面があるから頼もしいこと極まりない。
では、早速に忘れないうちに当日の道具の取り合わせから簡単に述べてみたいと存じます。
但し、具体的な道具の名称等はいまのところ、拙僧の道具ではないので割愛させていただきます

寄付 近代純文学大作家 書 
 作家らしい含蓄に富んだ四言で、この御任が古美術が大好きで国宝を何点が蔵しており、特に語り草になっているのが江戸期に活躍した南画家の作品発見のはなしは有名。
待合 寛永の三筆      
 流れるような線で、芯があり、おそらくは円熟期の作品

本席濃茶
床軸 近衛家 詠草 江戸初期
 公家でありながら権力に屈せず奔放な人生を送った人物らしく男性的で品格がある
花入 千家一重口  江戸初期  
 千家らしく几帳面な一重口、時代を経た飴色の渋さは竹ならではの世界だ
     
釜  芦屋 桃山時代     
 霰のなかに地紋があり味わい深い 蓋も一文字できりりと釜と炉周辺を引き締める
香合 古染 明末    
 堂々とした型香合染付の色と真っ白な地のコントラストの冴えに亭主の目利きがうかがえる一品         
水指 備前     
 江戸初期に入るのだろうが、それよりも正月らしく耳付を福耳と見立てた亭主の心意気に感謝
茶入 遠州七窯   
 流石、遠州の息がかかっている窯だけあって、瀟洒で、きれい寂びを如実に表現した作品で、なだれも肩から胴、 そして裾点手前で余韻をのこしながら留まっているところに巧みさを感じる
茶碗 高麗     
 井戸茶碗を筆頭とした場合、炉の濃茶茶碗としての格からすると二番目に位置するこの茶碗、素直な立ち上がりなのに、口辺の捻り返しは男性的で格の高さを決定付ける。高台畳み付は全体的にやや薄いが高台内は深く削られ、その中心には鋭い兜巾がキリッと立ち、この茶碗の約束を全て揃えている絶品と踏んだものだ。           
次碗 高麗     
 本来は主茶碗にしてもよいくらいの茶碗だ。細かな貫入が入り、色も枇杷色に近く、やや浅く口辺も若干大きいが見所のある高麗茶碗であった。
茶杓 某大名作 江戸初期   
 かいさきは兜巾がたち、節上は二本樋、節下は左側の景色が茫として深い山々を想像させる、なかなかの美杓。勿論、共筒。  

続いて懐石にいこう
向付 平目昆布〆    器 金襴手  
 う〜ん、平目の〆具合が調度いい。
煮物 すっぽん     器 筒型楽作 
 こちらのすっぽんはいつもながら美味。三杯でも四杯でも所望したいのだが、そこは茶人の端くれ故、グッと、我慢。赤楽の出来がいいし、手取りも法量。
汁 白味噌じゅんさい 器 独楽絵碗 
 早くもくじゅんさいが出た。拙僧はじゅんさいには目がなく、何杯でも所望したいがやはり許されまいて。
強肴 菜の花    器 古染付  
 和え具合が絶妙、順が回り思わず、皆より二つばかり余分に素早くいただいてしまった。古染付鉢は平だが、厚い作りで染付の色具合もよく、筆もよく走っており一つは持ちたいなあ、などと、ない袖を振ってみても悲しくなるばかり。
飯  笹寿司 鯛、鮭  器 銀蒔絵  
 勿論、御自家製だ。酢めしの具合よろしく、具である鯛、鮭もやわらかでアっという間に腹の中に納まってしまったのだが、もう二つ食べたかったア
八寸 くちこ 百合根
 くちこはいわずと知れた海鼠の内臓、これ5センチあれば酒が二合はいけるかな。百合根もやわらかくこんがり焼けており、八寸としては適任。
預け徳利        器 李朝   
 四合は入るのではと御亭主。なるほど下膨れでたっぷりといけるな、いつまでも両手に抱えていたい、これも欲しかったなあ・・高嶺のはなよ。
酒器          器 志野、瀬戸、和蘭、乾山、九谷、染付、青磁 
 これはもういちいち述べるまでもない、選りすぐれた石杯ばかりだが、一つだけ褒めさせてもらうとすると志野か。そう、色形、大きさと三拍子揃ってるといふものはなかなかだ。            
            
            
そして薄茶だ
床軸 江戸数寄者絵 大徳寺僧賛  
 当時の数寄者と大徳寺僧との付き合いは相当あったようで、本掛軸は粋で機知に富んでおり、僧の四言絶句が正月らい
花入 磁州窯  
 漆黒で胴部には花を描いているのだろうか。口辺が大きく水平に広がって力強い
水差 和もの  
 仁清と思いきや、地方窯ということだ。しかし土は信楽であるし、明らかに仁清を意識しているが軽快で薄茶にはピタリとはまっていた。
茶碗 高麗 楽 織部 
 茶碗にはこと欠かない本老舗のことだけはある。特に楽茶碗はその作者の典型作的であり且つ抜群に出来がよろしい。また織部も沓形ではあるが口辺は締まり、高台もガッチリ、時代を経た土味も魅力的で見所のあるものだった。三碗それぞれが一級の茶事で使えるとみたものだ。
茶杓 宗旦四天王の一人 
大名という見解を示す数寄者もおられたが、やや蟻腰で櫂先 (かいさき)も細く、全体的に華奢でということからすればやはり千家流かその流れを汲む人物の作とみた。

というところでしょうか。個々の美術品の特定はしませんが、いずれの品も適材適所、由緒正しく、しかるべきもので一分の隙間もありませんでした、はい!
でと、この日は久しぶりに骨のある論客に出会いました、というより拙僧が、茶事日程候補日のうち、あえてこの日を臨んだってところもあるのだが、4年前に拙僧の茶事に御招きいたした数寄者で、君不知也美術舘館長の酒盛鋭吼氏なのだ。
11時に近いこと10時45分、濃紺の背広に紺の渋いネクタイと美術家独特の尖った頭型と頭髪、そして全ての美術品を射抜くような細くて鋭い目は相変わらずだ。老境に達したのであろうが、接しただけで一歩も二歩も下がってしまうのは天性としての彼の後光か。
寄付のドアを開けるなり、「これは、石山氏、いや久しぶりですなア〜、茶事に、ということで何回も呼ぼうにも住所が変わったみたいで、で、どちらに」「いや〜、それにしても、う〜ん、なんですなあ、本日はよろしく」なんか言葉になってないかなア〜っとは言うまい、拙僧曰く「これは、先生、大変ご無沙汰いたしております、先般の茶事では失礼を省みず御案内させていただいた次第。大変に盛り上がり、先生の御蔭でありまして」
鋭吼氏はニコニコして「素晴らしい茶事でしたね、あとでまた四方山はなしをいたしましょうかネ、はい」「了解いたしました、それでは本日は宜しく御願いいたします」ということで寄付きから静かに火花が散りはじめたものだ。

当然乍ら正客は酒盛鋭吼氏、次客は医師御夫妻、三客は某名家15代当主御夫妻 四客は旦那より茶事が大好きという、かなり填まってる品の良い女性茶人、声もどことなく酒嗄れしてよく呑みそうなこの御任を仮に酒天壮女ということで、八畳台目畳の襖が開き、いよいよ御亭主のお出ましっというところだ。
しかし、キーボード敲いて傍らにビールグラスを上げ下げしているうちに拙僧は眠くなってしまいそうだ。で、もう一回だけ本ブログを伸ばさせていただき、このへんで寝ようとおもいます。
う〜ん、早く三畳台目の自室に戻って布団に入りたいのだア〜。
請う御期待・・・・・

いかがでしたか、今後、当職の聖職ある行政書士としてのキラリ日記を挟み乍ら、茶の湯、山行、居合、陶芸、古美術、歴史等に関して思うが侭につづっていきたいとおもいますので楽しみにしていてください。
石山政義 法務・行政事務所
所長 石山政義 
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