鎌倉碧雲山房は雲襄亭主 石山政義の数寄ものがたりにキラリ22

鎌倉碧雲山人は雲襄亭主石山政義の恐怖の山シリーズ第8弾その2
(その1はこちらを)
ここのところの鎌倉は霧だの小雨だのでしっとりの連続。都会独特の冷たく無機質で断絶的な環境とは違い、自然のなかにあるがゆえなのだろうか、本来なら「うっとおしい」となるのだが、逆に、「しっとり」という、むしろ好感する表現がピタリとはまってしまうのは、やはり鎌倉ならでは、と、早朝、ひとり悠揚として散策し乍ら感じたものであった。

於当山鎌倉碧雲山房 昨今は茶室南側窓を15センチほど開放して就寝することが多く、冷たく澄んだ空気がスウーっと入り込み、自然の恵みが茶室を、そして自分を清めていく・・・そう、朝の3時半を過ぎる頃だろうか・・・・ありがたいことだ。花弁の鮮やかな紅と匂うような色気を醸しだす芙蓉の花
前回に引き続き、といっても、小田原のタクシー恐怖番外編を挟みましたが、恐怖の山シリーズ第8弾の続きということで、恐怖観念の真っ盛りのうちに早速始めましょうかねエ。
そうです、クライマックスがくるのです。
では、いきます。
小雪がとめどなく降り続く富士山五合目でテント泊した我ら岳人二人。二月とはいえ、ここ富士では真冬で、なにもかもが凍ってしまう。ダウンシュラフをも突き刺すような、あまりの寒さに目が覚める、と時計は3時半を回っている。吐く息は真っ白く、まさかこれは凍るまい、と二、三回冗談とも真剣ともなく吐息を繰り返しながら表の気配を窺う。
雪は止んでるようで、とりあえずはホッとしたものだ。対角線上1メートル先で蓑虫状に縮こまっている仲間を足でゆすると、彼も眠りが浅かったのだろうか、即座に「おう、わかった」と、寝付けなかった不満をぶつけるように、仏頂面のゴロッた不貞腐れた顔が、暗がりからデロリと出てきたものだ、っにしても、相変わらす不機嫌な面だなあっと想いながら10年以上の付き合いだ。
槍ヶ岳の通称、北鎌尾根の縦走も苦労した。たしか7人パーティーだったが、独標を過ぎたあたりの岩稜が逆層の地点で彼は滑落したが、その岩稜部分を水平にグルリと張った15メートルザイルのおかげで救われた記憶がなせか蘇ってきたのはこれからの我々の登攀にとってあまりいいことではない、と振り切ったものだ。
気分も一新、しかし、恐ろしく冷えた水を一杯飲み、おもむろにテントのジッパーを降ろし、チラと表を視ると、シンとして相変わらずグレーブラックの世界だが、案の定、雪は止んでるものの風がでている、「チッ!厄介だな、」っと拙僧の気持ちに翳を落とす。
いまの時間で、この風だ、このぶんだと一番傾斜のきつくなる七合目あたりで9時頃の通過とすると、かなりのものになるだうことは推察でき、必要以上の神経、それと第一に動きが鈍くなることは必定だな、とマイナス要因が重なっていく・・・・・
ヘッドランプとガスランプ(カンテラ)をつけ、黙々と、しかし素早く食事を終え、登攀の準備にかかる。
20メートル先の別のテントでも、わずかにカンテラが動いており、影が一つ、準備に入っているようでアイゼンの冷たい金属音が「カチャッ、キンッ」っと闇の中を伝ってくる。
冬山装備のなかでもこのアイゼンの装着のときだけは緊張する。そう、12本の爪を一々確認し乍ら、長年愛用した登山靴へ確実に慎重に填めていくこの行為は自身の命に関わることだ。特殊ビニールの紐を締める度にビュ、シュッ、キュッ、っと放たれる鋭い音は、テント内に響き、そして自分の身を心を引き締めていく。
ゆっくりと確実に行う作業のなか、ヘッドランプに照らされたアイゼンの歯とそこから放たれる鈍い光を見詰めていると、一段と冷静になっていく自分がわかる。
隣を見れば、やはり想っていることは同じなのか、彼の装着作業は正確で、装着後の点検に余念がない。が、気になったのが彼のアイゼンの爪が10本。緩やかな傾斜は問題ないし、多少のアップダウンもOKだが、8合目当りからは場所によっては60度以上の箇所がある筈で、一昨年の冬山訓練でもそのような箇所いくつかあった。
10本だと、足首の柔軟性もあるがせいぜい40度から45度くらいが限度とおもわれ、それ以上の傾斜はピッケルとの相互利用によってその懸念の解消も期待できるが、そのようなハイテクニックが果たして我らにあるのだろうか。
拙僧は静かに「オイ、十本か・・・・・傾斜きついゼ・・・ルートハンティング、気をつけなきゃあなあ」というと、彼は「あー、わかってる。でもさ、結構、このアイゼン、愛着があってね・・・」と返され、この期に及んではもう言うまい、が、気持ちが落ち着かなく、拙僧の心に黒い点がズシリと穿たれる。
ザックの中を再点検。昼一回分のパン一つと握り飯1個、行動食にチョコ二枚、拙僧の常備菓子である歌舞伎揚5枚、それと雪で作った500mlのお湯。
すべてチェックし、彼に向かって静かに「どう・・・いくか」彼はおおきく頷くと同時にカンテラを消すとテントは二人が頭につけてるヘッドランプの明かりだけが忙しく移動する。
よしっ、と意を決してテントのジッパーを外し一気に表にでる。うわア〜、極さむ!真っ暗闇の世界に放り出された二人は互いに手を差し伸べ、登頂の成功を誓い、力強い握手を交わしたものだ。もちろんアンザイレンだ。
時計は4時45分を指しており、向う隣のテントは明かりはなく、出発しているのだろう。単独行とおもわれるが冬山、特に厳冬期における富士山では定石通りの時間であり、寧ろ我々のほうが30分遅れているのだ。
アイゼンの具合、ザックのバランスを確認し、時計は5時。登攀開始だ。時計の回転式ベゼルを合わせ、これから登っていく方角を見上げれば、灰色のグレーブラックの世界がどこまでも広まっている。
キシ、キュ、ザッ、という音がどことなく淋しく、いっそう心が冷えてくる。起伏のある小高い丘を抜け、夏道に入り、六合目過ぎあたりからは蛇行道を外れ直登することに。赤いウール手袋に纏わりついてる雪を払い、チラと時計を見遣る。6時35分だ。
雪は幸いに少しやわらかく、アイゼンをそれほど利かすこともなくゆっくりと高度稼ぎができる。だが案の定、風が出てて、小雪が舞いだしたのも想定内、だが、その降り方がとめどなく且つ粒が細かい。したがって見通しが悪くなり、周りの状況把握に困難が生じ、進路を誤る危険性があるのだ。
冬山の怖いところは雪が降ったり、吹雪いたりすると、その環境と景色が一変してまい、同じ山、同じルートを何回やろうが、ルートを誤ってしまうケースは枚挙に暇ない。
気を引き締めて、後方15メートルを登ってる連れに「おーい、大丈夫かア〜、アイゼン調子どうだあー」っと声を掛けると、ゼエーゼ〜言いながら「石さん、ちょっと疲れてきた、やすまないかあ〜!たのむ」って、30分前に5分やったのにな、と想ったが了解して、傾斜の緩やかな場所を探し小休止。
ザックを降ろし、板チョコと歌舞伎揚げをそれぞれ一枚食べる。が、取り合わせが悪かったのかカチカチのチョコの残片と、咬み砕かれた煎餅が口の中でゴチャマゼになって歯に引っかかり、湯を流し込んでも取れず、手袋外して人差し指で漸く外す事態に。後ろで、連れがピッケルでアイゼンに張り付いている雪団子を叩きつつ、軽蔑とも親しみともつかず、苦笑いし乍らジッと視ていた。やなヤツめ、ハハ・・・・
少しく和やんだところで、気を引き締め登攀を続けるも、どうしても連れが遅れるのだ。10メートル、30メートルと離れていく・・・まずいな、体力的には俺と均等な筈だし、冬山登攀も技術に問題ない・・昨夜の睡眠時間か、いや、もしかしたら精神的なものかな・・・・などと彼のいまの状態と原因を分析していくが来てしまったからにはどうしようもないではないか。
雪は小粒から中粒に変わり断続的に振りだした。風も強くなり、急な突風が襲ってきたときはいたたまれない。
雪上の新雪は根付くどころか瞬時に白い妖怪と化し、雪煙を巻き上げながら容赦なく、のたうちまわり我々を襲ってくる光景は、もはや世のものとはおもえず、雪上すれすれの低姿勢とピッケルでバランスをとるのが精一杯で、こんなときに新雪雪崩が起きたら一発でアウトだ。
これらの獄門抜けを繰り返しながら八合目あたりまできたのだろうか、もはや、視界は20メートル、下のほうで連れの苦しそうな声がする「ウ〜ン、石さん、休もうヨ、ダメダ、上に小屋が見える、この雪上では怖くて休憩できない、たのむ!石さん、小屋で休ませてくれ、御願いだ」と切実に訴えるのだが、話がつながらないし、呻きともうわ言とも聞こえる。ちょっとまずいなあ・・体力もさることながら精神的にかなりダメージがきているのはあきらかだ。
勇気付けるように「オイ!なに言ってるんだ、小屋なんか無人で開いてないゾ、あと、1合ちょっとじゃないか、ガンバレー」と叫ぶのだが返答はなく、一方的に、しかも絞るように「だめだア〜、はやく小屋に、左方向11時方角に灰黒いものが見えるじゃないか、石イ!聞いてるか、あそこで休ませてくれエ〜、たのむ、たのむウ〜」っと、吹雪のなかから伝わってくる声にはなにかが、のり移ったような、明らかに異常を来たした言動に近い。これはいかん、彼の状態を落ち着かせるためにも願いを受け上部斜め前方の黒い影を目で追っていった。
その黒く3分の2が雪で覆われている小屋は距離にして50メートル、時間して10分か、だが、傾斜がきついし、かなりの急峻だ。
素早く状況と時間を計算していくのだが、拙僧のアイゼンは12本、よって水平蹴り込みすれば二本から四本はアイスバーンと化した雪にしっかりと入っていくが、彼のアイゼンはなんといっても10本、ってことは雪氷に入っていかず、したがってアイゼンの力であの傾斜を登攀することは不可能、況や極度の疲労困憊と精神的に攻めらているときにおいてをや。足首目一杯曲げ、あとはピッケルを使い、バランスをとりながら、やるしかないのだ。
彼にそれができるのだろうか。しかし、現状では精神的に彼を落ち着かせるのが先決だ。
拙僧は大声であらん限りの声でこう叫んだ「わかった、じゃあ左上部小屋に行こう、ただ、なにもないし、入れないぞ、それと、傾斜がかなりある、おまえのアイゼンではキツイぞ、いいのかあ」
続けて「小屋までいけば気がすむんだな、それで山頂にいけるのか、どうなんだア」彼は気弱気だったが「うん、いきたい、だから・・・休ませてくれ」という返事が返ってきた。
そして一言「よし、左に巻いて、できるだけ緩やかな傾斜を狙おう、大きな岩が三つ、四つあるから、あそこを活かして詰めていくぞ!おまえはアイゼンを全面的に頼るな、むしろピッケルを主、アイゼンを副とするんだぞ、いいか!」「じゃ、俺からいくぞオー、俺が見えるか!」と叫びながら苦悶破戒してるであろう彼の黒い影を捜すが確認できない。
吹雪はさらに強さを増し視界は10メートル、風の回り具合が切れると僅かにボーっと、小屋が見え隠れする。
よし!ギャシ、ギン、とアイスバーンの雪をピッケルで穿ち、アイゼンを思いっ切り水平に打つ。ザジャッ、ガリッ、と独特の冷酷な音を残しながら一歩、二歩と登攀し始めたときだ!
下のほうで「石さん!アイゼンがかからない、苦しい、もっと、左にいけば夏道があった筈だ、おれはそっちに迂回する、石さん、たのむ、いかしてくれえ!」っと、しかし、確かに小屋に行くには道が当然ある。が、90度の視界では傾斜だらけだ、よしんば、道があったにしても雪で埋めつくされてる。
拙僧は嗜めるように「バカヤロー、やめろ、そこも雪でアイスだぞ、いいから俺がいくルートをいくしかない、わかったかあ、おい、いいか!おい!」っと叫んだ瞬間だった!
「ギャ!!イシさ・・・・・・助けエッ!」っと断末魔の音が・・・・・・・
つづく

いかがでしたか、今後、当職の聖職である行政書士としてのキラリ日記を挟み乍ら思うが侭につづっていきたいとおもいますので楽しみにしていてください。

では、また。

石山政義 法務・行政事務所

所長 石山政義 

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