俗塵を払って(9)
鎌倉碧水舎主による居合いにキラリ(1)

碧雲山人之愛刀(古刀室町時代) 刀身二尺五寸、柄鮫皮、柄巻皮、目貫赤銅金笹虎 鍔甲冑師菊鍔。
本日は、本日記では初めてでありますが、居合いについて述べてみたいと存じます。
拙僧、無双直伝英信流根元之巻相伝者として次代に継いでいかなければならない立場にありますので、今後、聖職である行政書士をはじめ、茶の湯、山行、そして今回から居合いをレパートリーに入れさせていただきたく御見切仕り置きの程宜しく御願い申し上げ奉ります。未熟者ではありますが、どうか数寄ものの戯言と想って愛読してくだされたもう。
と、前置きはこれぐらいにして、これからの記述においては居合いにおける技とか作法とか心技体がどうのは言いません、思いつくまま述べていきますが、のん弁ダラリでなくキラリといきますよ。
最近、もっぱら練習しているのは、所謂、早技ってやつで我々流派ではまず、正座大森流11本、立膝長谷川流10本、奥居合い等と続くのですが、この長谷川流10本(横雲、虎一足、稲妻、浮雲、颪、岩浪、鱗返、波返、滝落、抜打に変えて請流)を若干順番を変えて間断なく連続して行うことが早業ってやつです。これにも、もろ手(両手)、片手とあり、今日は片手早業について所見を述べます。
近代の居合いの大家であった大江正路氏により発案されたもので、居合いは手の内あり、即ち腕、手首、そして五本指のうちどの指を如何に使うか、さらに刀全体を使うのではなく切っ先で切ることの大事さを叩き込むには非常に優れた練習方法であります。
もともとは槍術、棒術には騎乗兵が馬上にて連続技を披露する場面があるのと同様、居合いにおいても連続した演武方法があってもいいのではということで明治大正頃に騎乗演武された名残りでもあるようですが、当時、どのように騎乗で演武したのか資料がないのでわかりませんが、いまの早業方法を全うするとなるといくつかの技と納刀にしかも馬上でありますから無理があり、もっと違っていたのでしょうか。
で、先にも述べましたが、居合いで大事なことの一つに刀柄の握りと指の使い方があります。これを知ってるいないでは雲泥の差がありますし、ポイントずれのままどのくらい練習しても上達は不可能と言っても過言ではありません。
では、右手五本指のうち(必ず右手で抜刀します。拙僧は左利きでありますが、右で抜いています。ために、どうしても右に余計な力が入るときがある)、どの指を使うか。まず親指、そして薬指と小指で柄を握り、且つ抜刀時には臨機応変に締緩めることです。人差し指はあくまで刀柄のバランスとコントロールの補助と考えてよいでしょう。雑巾を絞る感じとでも申しましょうか、あるいは包丁を握って大根をバササク切るときは無理な力は入れませんよね。
このように、肩には力を入れず、手首と指は常にフリーにしておくことが肝要。それと右手は勿論右半分の身体を使うときは必ず左の手、腕、そして身体も平等に使うことです。
早業という技術と方法は上記のことを学び、確認する為にはもってこいな練習方法でもあったわけです。
いかがでしたか、今後、当職の聖職である行政書士としてのキラリ日記を挟み乍ら、居合いというものの本質を考え、伝統技と心技体が現実と如何に関わりあわせることが出来るかについて思うが侭につづっていきたいとおもいますので楽しみにしていてください。
 猶、居合いに興味ある有志の方々は鎌倉市内では鎌倉鶴岡八幡宮(八幡宮道場)、鎌倉体育館、鎌倉武道館等にて(居合い流派は違うかも)見学出来ます。勿論、拙僧の鎌倉碧水舎でも見学できますが弟子もおらず、しかもズボラなこととて一ヶ月前に言ってくだされ。
もう一つ、「数寄こそものの上手なれ」ってことわざがあるますから安心を。