数寄者石山政義の時空遊泳その84 鎌倉のスナックオジサン

久し振りにスナックへ、といっても拙僧は歌は一切やりませン・・・所謂ゲコ、ってやつでゲス
この日は当碧雲山房に入っていただいてる大工さんと打合せ方々の一杯やっての二次会ってことに相成りました
で、店の名前は「当たるモ八卦」・・・・・占いの店じゃないヨ
ママさんは割りと真面目の方だが目が細く、加えて真っ黒なアイライン塗りが失敗したのか目尻過ぎのさらに3センチは長い どことなく狐コンコン
チーママは反対に目が丸いが、これまたアイラインはいいとして黒と紫のアイシャドーが異常にブ厚くまさに狸ポンポコねーちゃん、ってとこサ
こんなキツネとタヌキの館に迷い込んでしまえば根こそぎ綺麗にヤラれてしまうのは必定
わかってもヨダレダラダラついつい行っちまうのが男ってヤツ
そんな古今東西相も変らぬこの世界でのちょっとした体験の御話しです
さて、このスナック、御他聞に漏れずどこにでもある、気の利かない乾きモノ肴と適当な酒を飲ましてカラオケガンガン唄わせ小銭稼ぐお店でしてネ
この日は3人の先客がくねったカウンタに陣取っており、拙僧らは迎えられるまま左奥のカウンタ席に・・・・・
早速、聞きたくもないカラオケが薄暗く狭い部屋に心地悪く響いてくる
あ〜あ、もう帰りたいなア、みんな悦に入っっちゃってサ、なにが面白いんだろ、まあ黙っていよっと
ってな感じで覚悟してチューハイ炭酸割りチビリとやってると、横のオッサン、トイレに行ったらしく戻ってきたはいいが、そっと拙僧の肩を叩くではないか
ドキッと身を背けて、っていうか身構えて見返って驚いた
艶々のフサフサ長い髪の毛を器用な手つきで撫で撫でしながら「ウッヘッヘエ〜、どう?似合う?」だってサ
齢の頃65か・・・確か先ほどまでは毛の抜けた老羊のまだら頭だった筈
その容姿たるや全体痩せて顔も浅黒く、目もどことなくギョロリ、そーだなア、往年の三木のり平か、はたまた喜劇人のサンマあたりがイメージとしてはピッタリ
連れも拙僧も大笑い、ママさんも腹かかえて涙流さんばかりで抱腹絶倒とはこのことか
戯れて後ろ回って、そのかつらを二つにかき分けて輪ゴムで結んだモンだからそりゃあヤンヤの大騒ぎ
カウンタの右でカラオケ唄ってる輩からすれば、もうドッ白け、ったらありゃしない
おそらく、若かりし頃の髪の毛、ヒッピーよろしくかなり長かったのではないか
でないとあの手馴れた手つきは出来ない筈・・・・・懐かしかったことだろうて
その彼、調子乗りついでに自分の野球帽かぶって今日はカツラで帰るだのナンだのと強請って大騒ぎサ
ここまでくると付き合ってられんからいい加減切りのいいとこで我々はスナックを退散
にしても、あのオッサン、トイレの鏡まで持ってきて髪をなでなで、ウットリしちゃって全くその気だったよなア・・・げにも恐ろしいことだった