鎌倉碧雲山房は雲襄亭主 石山政義による数寄者の時空遊泳37

鎌倉碧雲山房から見遣る対岸の朝陽出る時間は日毎に早く、そしてその御目見えがわずかづつ右から左へと移動していく。自然の法則にしたがったまで、といってしまえばそれまでだが、こうリアルに毎日垣間見ていると世の中のこと、身の回りで起こっていることに逆らうということの虚しさを考えずにはいられない。

於鎌倉碧雲山房 ここから観える対岸、今年正月は連続する低山の右側ふもとにある妙本寺あたりからでてきたものだがいまは右側稜線がきれた前後にある雪ノ下辺りの裏山から昇ってくる
さて、そうはいっても現実はなあ・・・ということで確定申告も無事終わったことだし、早速に拙僧、煩悩にしたがってだな、いそいそと古美術商へと足が向く。
「駄菓子魔屋」の角を右に曲がった先手前にある、さび屋「射抜利屋」(シャブリヤ)、小さな入り口をスルリっと入り四畳ほどの一階の隅にあるショーケースをチラと目で軽く追い、変わってないなあ、と踏んで二階へ・・・・
「お〜い、いるかねエ〜、いしやまで〜す」と気の抜けた声を出しながらも内心はなにか観せて貰えるかな、とほくそ笑んで上がっていくと、そこは二畳台目向切の茶室になっており、台目床には千宗旦の数行ものの独特の枯れた字が目にとび込んでくる。
挨拶もそこそこ拙僧は開口一番「オ〜、宗旦じゃん。間違いないもんだね、七行かア、花入れに銘をつけたとかなんとか書いてあるけど、読んで」と、ごつく痩せたニヒルな射抜利屋に水を向けた。
と、すかさず彼はニヤリと笑って「さすがですネ、石山さん、ようわかってはりまんなア〜」と、客をくすぐることでまずは軽い挨拶、続けて「石山はんがおっしゃるとおり花入の銘をつけた手紙なんですワ、この銘の花入れ石山はんの御蔵にありませんカアー?ならこの軸、買うてください」だって。
拙僧は笑い乍ら「持ってるわけないじゃん、しかし、この書はいいね、典型だ」。続けて間髪入れず「いくら」と聞くと、彼も「いしやまはんやったらア〜、そーですねえ、○△万円ってところでッカア」と絶妙な値段を言ってきたもんだ。
ったく、いいところ突いてくるなあ〜、と暫し考えてると、重苦しい雰囲気を切り替えるのも旨い彼は、こう言ってきた「まあ、考えてくだアさい、ところでこの志野鉢、いいでしょ?直しがありまっけド、焼き上がりがほんのりとして、わたしは好きでんねん」と振ってきたもんだ。
二階に上がったときから書院棚にあったから先刻承知!っと言いたいところだが、気づかなかったな、って素振りで「お〜、いいねエ、鉢の深さと大きさからいって向付けだな、ふん、フン、四方変形長いところで14センチ、深さもバチリだなオイ!寄向付にゃあ必須ってところだな」っと、返したものサ。
ここでもニタッ、と笑う射抜利屋はまたしても褒め言葉を・・・「石山ハンだけでんがナ、こんなン、分かりはるンはほんまア、このあいだ買うてくれはった唐津の大振りの向付と合うンちゃいますかア、ヘヘ」とっきたもんだ。
そんなことは分かってるわい、とは言うまい、で、拙僧はニコリと応えた「ハハ、だねエ、確かに。志野釉も柚子肌、見込みの絵付けもよく出ているし、なんといっても裏底の火色がたまらないなあ」続けて、「直しがなけりゃ・・・しかし、いくらすんの?」っと、いきなり水を向けられた射抜利屋はちょと躊躇した様子。
そして徐に「いしやまはンやったらア、そやなア〜、☆○万円でよろしいでエ」っときたんで、拙僧は即「安いねエ、直しがなけりゃ、☆☆○万円ってところだな、でもやめとこ、っと」というと、彼はガックリとして「そ〜でっかッ」っと応え、なんとなく店内が冷めだしたところでおもわず拙僧が切り出す。
「話は戻るが、さっきの宗旦、もらっとくよ!」っと、スパッというや、彼の骨張った皮の薄い顔に皺ができ、ニタリしながら「買うてくれますか、ほんま、いいモンはみな、いしやまハンとこ行ってしまうでエ、流石、目利きでいらっしゃるがなア〜、ありがとうございますウ〜」と、少し胡麻が混じった頭がペコリと下に向く。
俄然、気分がよくなったついでなのか、彼はフラリと三階に上がっていき、神妙な顔つきでなにやら風呂敷包みを一つ提げてきた。
時代の更紗風呂敷を解き、味のついた桐箱をゆっくりと開け乍ら「ワテは好きですワ、こんなん、人に言わんといてくださいヨ」っと独り言のようにホツリと言って、ゴトッと取り出したるは古色蒼然たる古唐津のビンビンだ。
一瞬、拙僧は「フウーッ」っとため息とも感嘆ともつかない言葉を吐きつつも、拙僧が手は既に茶碗を撫で回しはじめる。
全体の姿からはじまり、見込み、掛けられた釉薬の具合、そして茶碗の命であるところの高台、最後に重さ、という具合にゆっくりと鑑賞していく・・・・・全く非の打ち所がない堂々たる唐津茶碗だ。茶碗全体に所謂、雨漏りが品よく染みており魅力ある逸品だ。
こういうものがでてくると、拙僧、というか我々庶民レベルってのか中産階級ではとてもじゃないが買えるもんじゃない。したがって値段を聞くことさえ躊躇してしまうのだが、しかしこんなハイレベルな道具を仕入れることが出来るのはそう何人もいない、正に射抜利屋の面目躍如ってところか。
この間、約3分、茶碗を置きなおして拙僧は彼にこう言ったものだ「ないものだね、いや、頭が下がるよ、うん、ありがとう!」と、続けて「値段を聞くのも恐ろしいが、こんなものはやはり昔から言い伝えられるとおり納まるべきところに・・・ってやつだな、うん、ハア」っと完璧に諦めの態。
彼曰く「こんなン、観せても、そうそう判る御数寄者おらへん!御褒め願うてもろうただけでも有難うございますウ〜」っと謙虚な言葉が続くが、その裏には射抜利屋独特の審美眼が輝く。
ったく、大したもんだ。この鋭く、理知に富んだ感性は彼の先祖からの伝統ではあるまいて。そう、今を活きている彼の個性、目利き、美術に対する姿勢、そして大胆さと度胸が備わってはじめて成せる仕業だ、などと100パーセント確信したものだ。
なんだかんだといってるうちに時間は既に7時近い。にしても射抜利屋の眼の確かさには敬意を表したい、が、言わずもがな、っということで拙僧は千宗旦の軸を包んで貰い、双方とも気分上々のもとに鎌倉への帰途についたのであった。

いかがでしたか、茶の湯、居合と数寄者の世界は。今後、当職の聖職である行政書士としてのキラリ日記を挟み乍ら思うが侭につづっていきたいとおもいますので楽しみにしていてください。


石山政義 法務・行政事務所

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鎌倉円覚寺http://www.engakuji.or.jp/index.shtml

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