数寄者石山政義の時空遊泳  その80 今年は必ず鹿島槍ヶ岳へ山行!

久し振りに山行の御話しを(写真は爺ガ岳から鹿島槍への縦走路より望む剣岳
例年実行してる春、夏、晩秋の山行、去年は左足ヒザの異常事態で諦めざるを得なかった
まあ、原因、といえば情けないかな、おそらくゴルフ・・・・無理が祟ったのだ
それからとういもの、やれ針灸だの整体だの温泉だのトクホンだのと一人で大騒ぎしたのは去年の今頃だった
爾来、数寄な茶の湯と山行は抑え、代わりに動きの少ないゴルフを細々と苦しみ悶えつつの試行錯誤の連続
がしかし、進歩のないあまりの酷さにゴルフ連中からは見放されて今日に至っているのは、言わずもがなとはいふものの、眞に情けない
さすが居合は弟子もいることだし、中断するわけにもいかず、その間はもっぱら立ち技での教授
こんにち、矢鱈喰い散らかしの治療と、数寄なことなら八方何千里でも、ってな行動を厳しく律したのが功を奏したのか、足も完全復活したからにはもはや邪魔するものもあるでもなく、したがってここはひとつ3000メートル級の山行を実行するに如くはない
となると、復活戦はやはり永年の山行でも三本指に入る鹿島槍が岳を選ばざるを得ない
この鹿島槍、10回はやっつけている勘定。扇沢から7回、八方尾根から2回、そして白馬から鉢の木岳までの縦走で1回
そう、この山、何回登っても飽きない山なのだ
山行者によって受容の仕方が違うだろうが、五龍から下降し、鹿島キレット付近から望む、ちょうど立山三山の峰が切れた辺りの剣岳は、ほぼ全貌が伺え、三尊(本尊と二脇待)と見紛うほどで美しいことこの上ない
が、鹿島槍を降り冷池山荘を過ぎって40分も歩いた辺りの爺が岳の北峰の手前から臨む、今度は立山三山を前衛に控えた、立体的で奥行きのある剣岳の雄峰も強烈な印象だ
特にここからは一服できる場所が諸所にあり、風、陽光を季節ごとに意識しながらの岩陰に、或いは暖かい日差しの射す緩やかな斜面にドッカと座ることができるのも嬉しい
対山鎮座したからにはコーヒーを呑んで、まず20分は動かない
時間に余裕があるときは40分もいることもザラ
往年のミレーのザックからジッポのガス器具をガチャガチャ組み立てる
そして、これまた穴ポコヘッポコの30年以上前のコッヘルで湯を沸かしてのコーヒーは凡そこの世のものとは想えないくらいに美味しい
カップの湯煙とともにいろいろな想いが走馬灯のように現れては過ぎっていくのを追っていくのはとても愉しいことだった
24年前にやった厳冬の鹿島槍、このときは頂を極め、テント撤収したあとでの赤岩のルートでの拙僧の滑落
あのときはピッケル打ち込んで危うく止まった・・・・・
近くでは10月半ばにやったときのとんでもない大雪・・・・
このときの異常気象は物凄かった、猛吹雪で爺が岳南直下縦走路はアッというまに真っ白
進むか退くか、道半ばまでのいまさらはないだろう、それに嘗て知ったるなんとかってやつでアイゼンも装着せずに偶さか知った岳人を励ましつつ冷池山荘までよく辿り着いたものだ
翌日は当然のことながら雪も凍ってる。常備の四本爪のアイゼンでは鹿島槍への縦走はどだい無理なおはなし
きっぱり諦めて早めに下山し、行きつけの温泉でドップリ浸かり乍ら名物の煮込み肴に呑んだものだ
このときは五龍岳、唐松岳を隔てた白馬岳で大変な山岳事故がおきたことを知って、よくも無事還れたなアと胸を撫で下ろした、っていうか、背筋が凍ったものだった
山というところは歓喜と苦しみ、極限では生きるか死ぬかってやつの両面をもったところがあって、ある程度ヤッてる連中は大なり小なり体験していることだろうか・・・・その是非は別にして・・・・・
1000メートル下の登山基地で愉しく談笑、周りの登山者も賑やかにやってる、ってやつが稜線に突入した途端に天候激変の急転直下の地獄の世界、ってのはよくあるはなし
そんなこんなとボンヤリと考えてるうちにわが想いは時空を越え、8月の碧空に聳え立つ鹿島槍、そして岩の殿堂、剣岳へと思いを馳せるのだった