数寄モノ語り その163 真夏の碧(あおい)

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吉武弘樹 「碧」 油彩

 盛夏、御見舞い申し上げます

連日の雷鳴とスコール

サッパリして気持ちいいとおもうのだが

人によっては恐れおののくようだ

自然の生業、っと割り切ってみれば

そう悪いモンでもない

さて、ここに取り上げたる油彩画一幅をご覧あれ

決して深海、時空を超えた宇宙ではない

はたまた人知れぬ前人未到の山奥の世界でもない

よくよく観察すれば山間辺りに宿って一人静かに窓辺を見遣れば

目に飛び込んでくる光景なのだ

ちょっと記憶を辿れば誰でもが覚えてる懐かしい光景

しかし、現世人間が忘れつつある大自然のいろでもある

作者は決して懐古主義でもなければロマンチストでもない

描法は点描技法を駆使し、森林の濃淡、樹木の陰影に

わずかな光を放つことによってこの絵には生命が宿る

作者もまだ若いのか、作品全体には初々しさを感じる

日本人ならではの自然に対する敏感さと奇抜な発想が

奥深く神秘的でいながら清々しい作品に仕上げてるとおもう

東京芸大卒ということだが応援したい作家ではある