行政書士石山政義による法務にキラリ その31

行政書士による風俗営業許可(風営法)手続にキラリ(1)
今回は、上記テーマを何回かにわけて連載ものとして御話ししてみたいと存じます。
題材がアルコール世界なんで、まずは一杯呑んでと。

於鎌倉拙宅 李朝堅手徳利、酒は約8尺入り、容姿に抑揚がある。 配する酒盃は高麗青磁陰刻輪花平杯、完成度の高い青磁色と線彫りに高麗期の爛熟さを彷彿とさせる

さて、我々、行政書士として申請代理・代行業務の半分を占める約2100種類に及ぶ許認可申請手続は実に多種多義にわたります。そのなかでも人間の欲のはけ口である一端を担っているのが風俗営業又は性風俗営業関係であるようです。これをねらって風俗関連営業をしようとするには必ず許可乃至登録を所轄警察に届出ないと厳しく罰せられます。
ところが、この風俗営業許可、性風俗営業登録というのが一筋縄ではいかなくて、経営者はかなりの労力と無駄金を強いられ、お手上げになるケースがたくさんあります。これらは警察の処理がどうのこうのではなく(取締りが厳しいのは当たり前)申請人である経営者の風営法に対する法律知識不足は勿論ですが風俗営業そのものを甘く考えているというのが実情です。
そこで、我々、行政書士の出番となるのですが、なんといっても相手は警察署の生活安全課、しかも刑事兼務している職員の方もあり、なかなか忙しいし、しかも警察署によっては担当一人という場合も結構ありますから申請も予定通りにはいきません。
無事、申請受理になったからといって営業できるかというとそうは問屋が卸さないのが風俗営業許可。その先に浄化協会(警察OB等で組織する)による申請地での実地検査があり、そこでまた厳しいチェック、さらに重箱を突かれますから予断を許されません。場合によっては内装撤去、図面差し替え等と、万全を期したつもりでも落とし穴が結構有り得ますから細心の注意が肝要。そして、申請から、現地立会い、認可証交付まで凡そ、55日は要しますから営業予定、特に女の子の採用から店舗家賃の発生の条件等をキチっと計算しておかないと申請人は苦労しますから御心得のほど。
前置きはこれくらいにしておいて、この風俗営業許可がいかに難しく複雑かを理解してもらう為にも当職が扱った案件のうちからひとつ実例を基に述べてみたいと存じます。
尚、営業場所、申請人と所轄警察署の名前は仮称ですのであしからず。
では、
依頼人は当職の得意先の重役からの紹介でZ国籍の女性のアラ・カセギ女史。年齢30歳の目もパッチリして黒髪豊かで、とてもエキゾチックな美人さんで、こりゃ当職としてもガンバらなくっちゃって思ったもんです。
さて、アラ・カセギ女史の在日歴は5年、長年の夢だった日本国でのクラブ経営(2号申請)をいつか実現したいと、いろいろと構想を練っていたようですが彼女の在留資格は「人文・国際知識」。
したがってクラブを経営するには日本人または日本帰化した方以外には在留資格が「投資・経営」か、「日本人の配偶者」又は「永住権」等の必要がありますから現在の資格ではその在留目的に反する行為であることを説明しましたが、アラさん、そこのところはちゃんとわきまえていました。
曰く「ハイ、ワタシするではないデスネ、できない、ワカテル、友達ネ、コレするネ」。すかさず「その方の資格は何ですか?」、「日本人のとケコンしてるネ、タイじょうぶ、ウン」、そーか、配偶者かあ、間髪入れず「じゃ、アラ・カセギさんは申請人にも管理者にもなれませんよ、いいですか」、って言ったらウインクして「ワカテル、わたしビザで出来ない知てるネ、そのくらイ。アハ、友達まかせるネッ」だと。こりゃ、大したタマだな、っと感心している場合ではないのだ。
一呼吸してさらに彼女は「わたしのイイ友達ネ、名前、ドクデ・シビレッタていうネ、ちょとドイツ系、デモ、国、アタシと同じネ、いい名前ネ。なんでもヤてくれる、シかりして、いいこネ、ウフ」、なんだかヤバそうな名前だけど、日本人の旦那さん大丈夫かなアー、にしてもフン、よく知ってるなあ、まあ外国の方は横の関係があるからなア、蛇の道はなんとかってことだからなあ、で、必要書類を書きながらこう言ったもんさ「では、貴方はあくまで友達ということで、その申請人であるドクデなんとかって方と一緒に今度は申請地で御会いさせてください、そのときに彼女のパスポート、市区町村の外人登録係で発行する登録原票記載事項証明書と携帯してる外国人登録証コピーを持ってきてくださいヨ、それと顔写真二枚ネ」、当職はいつものとおり事務的にパパパッと早口に言ってメモを渡した。
アラ・カセギ女史は流石に呑み込みが早く、渡したメモもサッと読んでニコリ、「OKネ、心配いらないネ、でも、シェンセイ、少しコトバ早いネ、せかちネ、でもワタシ、わかたヨ」、だなアー、痛いとこ突いてくんな、ったく。愛嬌ある笑顔だが、油断ない目だぞっと感じながら「それと、店舗契約はどうですか、ちゃんとドクデさんの名前で契約しましたか」、またニコっと笑って「石山シェンセイ、管理人、みなワカてるアるからッ、タイじょーぶ、たぶんネッ、あと金ネ、はらうネ、みなワタシに言てくださいネ」。「えー、わかりましたが申請者と経営者はあくまでドクデ・シビレッタさんですから、それと警察には申請人と当職が行きますからそのへんのところもお願いしますヨ」。
っとまあ、こんな会話をして、即実行をモットーとする当職としては翌日の現地での待ち合わせというとにアラ・カセギさんは大きい目をパチパチしてビックリしてましたが「ハイね、シェンセー、早いイイネ、タイじょうぶネ、エー、じゃ、明日、店で待テルネー」、だってさ。
で、既に、本件は、ちょっと神経を使う案件であることは賢明な読者はお解かりの筈。しかし、申請人も経営者もドクデさんである限り、入管法風営法上、その他法律的には問題ないのだ。
翌日は、風俗営業許可申請用の七つ道具である赤外線計測器、カメラ等をカバンに突っ込んで一時間ばかり早く出発、商業地域申請店舗から半径50メートル以内の小中高大学校、福祉施設、児童施設のチェックと病院と診療所内の入院施設の有無等を調査することと、申請店舗ビルの入居状況の把握を要領良くなわなければならない。
大方の調査も終わり、申請店舗に入ると既にアラ・カセギさんとドクデ・シビレッタさんがタバコ、プカプカ待ってました。なるほどドクデさんも日本人好みのするブロンド系の長い髪が綺麗な落ち着いた、人の良さそうな方ですが、目つきにしたたかなものを伺わせますから類は類を呼ぶ、ってとこですかね。開口一番、「はじめまして、行政書士の石山です、お手柔らかに願います、ドクデ・シビレッタさんですね、早速ですがパスポートを御見せ願えませんかア」。と、バックからスッと何枚かの書類とパスポートを取り出し、黙って当職に手渡したものだ。
チェック箇所はパスポート有効期限と在留資格種類及び許可期間、そしてドクデさんの場合は日本人の配偶者なので外国人登録原票証明書にその日本人と結婚した旨の記載に有無。
うん、OKだな、そしてやんわりと「ドクデさん、確認ですが、いままで刑罰に処せられたこととか罰金受けたことありますか、またはしょっぴかれたことは?あったら言ってくださいね、大事なところなんで」、アハハッ、と笑って「ジェンジェンないネ、友達、連れていかれたネ、でも、アタシだいじょぶネ」、またケラケラ笑って「ウチのダンナ、真面目、設計事務所やてるヨ、それ、きらいネ」だって、なんかスゴイ女性だなア。
よかった、これで先の、外的環境要件、人的要件は問題ない、あとはここの店舗契約内容と契約者が誰かだ。「で、アラ・カセギさん、ここの契約書はどうなりましたか、うまく契約を交わせましたか」、と、4,5枚からなってる契約書を見せて「たいじょぶネ」。
渡されたページを捲ると、ウーン、やっぱり、賃借人がアラ・カセギ女史ではダメダ、本件の場合は当然ドクデ・シビレッタさんでなければならない。で、こうアドバイスをした「先日言いましたがこの契約書は使えませんので、賃借人をアラさんからドクデさんに変更するか、あまりいい印象を与えませんが名義人はこのままで特約条項にドクデさんが申請人で経営者である旨の一札を入れてもらうかどちらかを考えてもらい家主と交渉して下さい。」と言ったもんだ。
結局、これは冒頭の事情によりドクデさんの名義に変更して落着し、家主、ビル管理者からの所謂三点使用承諾書も差し替えを願い、これで店舗権利関係も確認できたから、あとは当職による店舗図面作成だけだ。
が、これが一番大変なのだ。だいたい新築ビルならいざ知らず中古ビルの場合は、間仕切りと内装が当初通りということはまず、ないからビルの平面図だけが頼りなんで。ここから間取りを確定させ、平面図面積、そして間取りしている営業面積を計算し、それを店舗面積とその他面積に振り分け内装、防音、椅子、テーブル、照明等の配置の確認と図面へ反映。この作業だけはやった方でないとわからない。今回は申請地に2回通ったがまだ良いほうだ、別件では内装工事の手直しが発生したため4回通いつめた案件も。
さて、五里霧中で出来上がった図面を確認し、さらに色分けして半径50メートル図、平面図、店舗図、営業面積図、椅子等配置図、照明配置図等が完成。フーッ、ここまでくれば8割は終わったも同然、今回は店舗が35坪、営業面積が約28坪で、まあまあの店。
その間に、衛生保健所に営業許可の申請と現地の立会いがあり、無事終了。そしてドクデさんに言ったものだ「昨日、H警察署でアポが取れましたヨ、二日後の午前10時ですが、いいですよね」、「エーッ?10時早いネ、ア、アタシ寝てるネ、遅イ、ありがたいネ」、即、「すいませんが、警察はそんな我が儘は聞いてくれません、今度は何時になるかわかりませんから、申請日の前日は用事を早めに切り上げてください」とピシャリと言った。ブスッとしてましたが「OKネ、イシヤマサン真面目ネ、ワカタ、ケイサツ何処アル」、よしよし、そうこなくちゃね、てもんで、場所、パスポートと外国人登録済証の携帯願いと、想定される質問に対する返答方法と注意点をアドバイスして、本番に備えたものだ。
で、当日、H警察の一階ロビーで化粧のりのりでなかなかの色気を振りまきまきで、ここまでくると気持ち悪いなアー、ってことは臆面にも出さず、最後の打合せと本人署名と押印を済ませ2階へ。香水の匂いが控え室に充満するなか、奥から「いや、石山先生ッ、お待たせ、どぞー」って安全課担当のM氏がにゅーっと顔を出したものだ。赤黒い顔で人なつこそーだがなんか粘りがあるなー、こりゃ突かれるかなと直感したもんだ。
そして、ここからがドクデ・シビレッタ女史と当職、そしてM担当者との丁々発止が始まったのだ・・・・・続く。請う、御期待。

当事務所におきましては、日本中にある許認可申請と事実証明書類作成、また公証人さんの御役目と消費者との歯車的存在である、街の法律家である行政書士が如何に関わっていくかを、他の日記を挟み乍ら、述べていきたいと存じますので御期待ください。
石山政義 法務・行政事務所
所長 石山政義 
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Emil: ima@oak.dti.ne.jp
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