行政書士 石山政義こと碧雲山人の時空遊泳

俗塵を払って(13)
数寄ものがたりにキラリ(5)
ここんところ、鎌倉の山中での拙宅三畳台目では夜半と早朝は布団をガバっとかぶり直すし、夜中は一層鈴虫が喧しい。
こういうところにいると、人間と自然が、なんの前触れもなくふわりと一体融和でき、季節のうつろいを素直に、そして確実に享受できる。自然との同化というより大自然が柔らかくこちらを包み込んでくれ、そしてまた現実に戻してくれる。帰巣本能ってのはこんなときにものすごく感じるなア。
少し、寒くなってきたたところでやっぱり一杯だネ、徳利と酒盃、そして本日は、ちょっとした酒肴を。
於拙宅鎌倉 手前に黄瀬戸六角杯、六角の面取りが厳しく凛としている。 対する酒肴の器は李朝は三島鉢、中身はいわずとしれた甘鯛の塩焼き。だが、観てのとおり、ちょっと焼き過ぎ・・。三島も細かく上釉薬もよく溶けて高麗青磁釉薬の名残が伺えて当時の陶磁器作製事情の変遷期を想像してみる
 さて、前回に続き、茶の湯シリーズ第一弾である遠寺晩鐘堂に於ける拙僧の茶の湯の続きといきましょうかね。
師走茶事に向けてスタートした道具の準備は、懐石道具、本席手前道具がほぼ決まり、主茶碗と茶杓をのこすのみとなった。正客以下4名は、皆、数寄者であり、目利き、特に君不知也美術舘館長の酒盛鋭吼氏はその極まりだ、元公立陶芸課長なんで、酔っ払おうがなんだろうが、面ん玉、引ん剥いて奥の々まで覗き込むからとても怖い御仁。
あれやこれやと考えて、やっと、茶事の前日、くらさび屋の苔寺山水専務と話し合って決まったね。そう、茶碗は高麗茶碗で熊川茶碗、姿が美しく柔らかい。胴から腰、高台裾のラインは抑揚があり、且つ、ふっくらとして肩が凝らない、色調も本手熊川茶碗独特の地肌にむらむらと雨漏りが出て、言い知れぬ幻想感が漂い、山水画の最高峰である南宋水墨画家であり、日本では残存作品の殆どが国指定文化財に名を連ねている牧谿を髣髴とさせる。見込みは深く、中心の底にはキリリと締まった直径約1センチほど茶溜りが円く削られ、理想的な見込みだ。高台も竹節で高台内は所謂トキンが立って見所十分。
対する茶杓小堀遠州、綺麗さびをモットーとした江戸時代初期の遠州流の始祖茶人の手掛けた茶杓だ。かいさき、節上、おつとり、切り留め共、約束通りでスッキリとした上品な作品。特に節上の景色は山々に時雨が薄く濃く、サア―っと降り散ってる感があり、絵中ならぬ杓中に詩ありってことかな。これなら幽玄な熊川茶碗にはピタリとくる、と自負したものだ。
よし、これで当日の取合せ道具が全部決定、あとは懐石の向付けに盛る白身魚を考えれば良い。電話で平泉三石に確認をとり、この時期の白身はひらめか真鯛ということ、築地では茶事の前日にならなければ何が揚がるかわからないってことなんで、出たとこ勝負ってことに。理想的には向付が平目昆布〆とくれば焼き物は甘鯛なのだ、逆に向うが真鯛なら焼き物は鰆か鰤の脂をおさえたところを照焼したところかな、ウン。
煮物は定石通り海老と蟹のしんじょ、強肴一点にして鮑を蒸焼、八寸は山のものは銀杏、海は強肴に雲丹と何かを考えてるから、こちらはくちこで決まり。これで懐石はよし、と。
さて、全てが決まり、はっきりと当日の流れが明らかに見えてきたところで、拙僧の長年の茶の湯の師匠のところに挨拶方々、平手前の復習を願いでた。そう、茶の湯に一生を捧げられた御方、仁和徳也先生だ。拙僧のヘタクソで我が儘な稽古を長い目で懐深く見守ってくれた方。真に、三歩下がって師の影を踏まず、ってところの先生ではある。
でと、いつものこと乍ら、仕事の合間にイメトレを何回も繰り返し、事務所で右、左と手取り、足取り、やってると、横から事務員が{センセー、何やってるんですかア〜、マンボーでも踊ってるんですかねエ〜」だってサ、あれエ〜、ウー、マンボ〜!
さて、茶事前日の夜、平泉氏から電話があり、築地で、上等な平目があったので半身を手に入れたとのこと、そして、甘鯛もやや小さめだがなんとかなったと、弾んだ声で言ってきたものだ。よかったな、あとは平目を〆る時間が微妙なのだが、氏なら大丈夫。
いよいよ、当日が来たのだ、快晴、それ程寒くはなく、正に茶事日和とはこのことだ。
夢之又夢記念館の開門は9時だが特に御願いしておき、8時には関係者の入館がOKなので拙僧は鎌倉から着物等の荷物を両手に持ち、山行用のザックを担いでピッタリ8時に着いた。道具は濃茶茶碗、茶杓以外はくらさび屋に全て預けてあったから助かった。懐石を御願いしている平泉氏もタクシーで参上、料理、鍋等の荷物を眼一杯積んできた姿には御来光が挿していたものだ。
まもなく、くらさび屋の苔寺山水氏が水屋方として3人手配してくれ、ベンツで乗り付けてきた。これも荷物が一杯。専務苔寺氏が三人を紹介してくれ、皆、きびきびしていそうだ。
早速、荷物を解き茶事の準備だ、あと2時間半なんで遅くとも9時40分には準備万端でなければならす、失敗だの道具を忘れただのは許されないのだ。席中の掃除、庭の手入れ、火起しから炭の準備、厨房ではお手伝いさんが一人手伝いにきてくれ、平泉氏も料理の確認と懐石道具とのバランスの取り方に余念がない。横から、ちょっと腹も減ったことだし、ひらめの昆布〆を試食と偽って口にパクリ、っと、すごい、こりゃ、美味だ!〆具合も抜群。今日の御客は幸せもんだぞ、っと舌なめずりし、一杯呑むのをグッと我慢して、メイン道具の箱からの取り出しからそれらの道具の使い道までを指示。
いよいよ、10時を回り、来客が一人、二人と来られ、寄付きに男衆が案内をしていく声が聞こえてくる。既に着物に袴を着けて準備完了の拙僧ではあるが、いつものことながら、やや緊張感が過ぎるもワクワク愉しさも出てきたものだ。
10時半をまわり、いよいよ席入りだ、和服の絹のわずかにすれる音がなんとも小気味いい。さて、正客である酒盛鋭吼氏とは久しぶりの再会、型どおりの挨拶を交わすも、本席の軸をチラチラとだいぶ気になられてる様子。流石、わかってるな、と、すでに鋭い問答は黙していながらも始まっているのだ。そして次客、三客と、挨拶もそこそこ、即、炭手前。釜は古芦屋、炭取りは唐物、羽根は梟、火箸は時代、環は銀象嵌割環、そして香合は柿安南っときたもんだ。で、せっかちな拙僧だがこのときばかりは、と、ゆるゆると(濃茶手前もそうだが)序破急でやってのけるのだが、つい、手順を省くのが拙僧の常習、堪忍々ってことで、香を入れて、後掃きはトンと忘れて、釜掛け直し、拝見が終わるのは定石どおり。鶴羽根での座掃きも入念に大きくサラリとさばいてと。いよいよ、これから懐石の始まりだ。
器と料理と五人プラス亭主との遠寺晩鐘堂三畳台目での饗宴だ。それは至福の極致に至るための序曲でもあるのだ。請う御期待!
では、拙い一首を
      「塵散るや湯煙たてて年の暮れ」 一笑、一笑

いかがでしたか、今後、当職の聖職である行政書士としてのキラリ日記を挟み乍ら思うが侭につづっていきたいとおもいますので楽しみにしていてください。
石山政義 法務・行政事務所
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