碧雲山房は雲襄庵主 石山政義の時空遊泳 鎌倉の四季5

本日は、仕事ブログの合間ということで、先週参列してまいりました桃源郷美術館主催の恒例であります桃源茶会を取り上げて、ちょっと気分転換ということで。

於拙宅碧雲山房 門を潜り、長い階段を上りきると左右に岐れる路がある。そこを左に、さらに二十歩ほど登っていき、右に迂回する手前、左斜面一体に群生する熊笹の一群 早朝、短い時間であるが山内を散策してると、予兆もなく山全体を南から北へ、サアーっと春風が吹き抜けていく、と瞬間、目の前の熊笹が靡くのを目で追うと同時に六感全てが働き、全身に電光が走り抜ける体験をするのは人間が本能の蘇った瞬間でもある・・・・
日曜日、久しぶりに本日は急ぎの仕事はなく朝9時から鎌倉は当山、碧雲山房内にある碧水舎道場にて居合抜き。正座の大森流、立膝は長谷川流から始まり、早業、奥居合の立膝、立ち技、番外まで黙々と一時間半。拙僧の愛刀真剣は室町時代の身が二尺五寸、樋は入っていないためか少し重い。したがって刀を振っても大きな、あるいは派手な音はせず、そのかわり、ヒュン、シャッ、という、どことなく不気味で重たい刀音が鳴る。特に正確に身体と剣が一体化するときは垂直、水平、袈裟切りの全ての切りに対してその刀音が道場全体に響き、張り詰めた緊張感を伴って耳に反響する。こういうときは、今日は切れているな、と、精神と身技の充実さを実感できるのだ。
いい気分で一汗かいて道場を出てみれば今日は天気も上々、一部の迷いがあったが、これは茶の湯日和よなアー、という口実も手伝って同美術館茶席三席のうち濃茶を受け持つことにあいなった透徹美術商からの招待に誘われるままに出かけてみることに。
早速に母屋で着替えて、扇子、袱紗、懐紙等の七つ道具を背広に突っ込んでと、階段をダダっと駆け降り鎌倉駅西口に向かい、改札を入るところで、おっと、忘れるところだった、茶室水屋社中の方々への陣中見舞いだった、ということで駅前の鳩サブレで有名な鎌倉豊島屋で源氏巻き御菓子となぜか旨そうなワッフルがあったんで二段重ねで包んで貰って、鎌倉から電車に乗ったものだ。
鎌倉からは6分で大船だ。乗り継ぎよく3分待ちで東海道線に乗り換え、グリーンに席を移して早速、アテンダントギャルにビールと裂きイカを注文して、もう旅行気分に。これがまたいいのだ。一週間の疲れは何処吹く風ってところだ。
東海道線48分間の電車の旅は短いと言うなかれ、いい茶道具が観れるかなとか懐石弁当はなにかなア、とか想像し乍ら一本、二本とガブグビやってると結構ウキウキ、楽しいものだし、太平洋は相模湾の海原も輝いて、ものすごくいい気分になってきたもんだ。特に湯河原、真鶴を過ぎるあたりの海岸線は遮るものはなく十二分に堪能させてくれ、旅行気分を味あわせてくれるのだ。
さて、久しぶりの熱海は相変わらず、ごった返しており、ミカン売りだの饅頭売り、お出迎え丁稚だのが雑然とダラダラ動いているのは温泉町にはよくあることだが、パッパッ動く拙僧の性分にはいまいち合わない、拙僧に貸してみろ、っと想ってみたとろで、詮無きことか。
人ごみをスルリと抜けて駅前のタクシーに乗り込み一路、桃源郷美術館に。受付を済ませ、早速、透徹屋濃茶席に向かう。たぶん水屋内は、さながら戦争だ、茶碗洗ってる方、饅頭の準備、道具の出し入れ、そして隅で腹ごしらえしている方までと、水屋の光景はいつも楽しく、しかし裏事情が、観る人物によってはそこの亭主の力量が全て分かってしまうから怖い。
だが、裏から回って、勢いよく襖をガラリと開け、拙僧が顔を覗かせたところ、内の水屋一同、目を三角にしてビックりしているではないか。いつも颯爽としている孔慈君も食事の最中らしく口をパックリと開けて拙僧を見ている、この間、約5秒か、っと、奥にいらっしゃった社長奥様が流石に慌てず、笑い乍ら「これは、石山さんようこそ、で、そこは、ゲホッ、水屋口ではなく窓なんですの、江戸時代の造りらしく障子が少し大きいのですが・・・・・」あっちゃアー、やっちゃった。
赤面しながら、正しい水屋口を案内していただき、先のお詫びと改めての御挨拶を。
でと、失礼は御愛嬌ということで綺麗さびに片付けて早速に饅頭を馳走になり陰点てで早速一服、っと飲み干したこの茶碗、ただモノではない、黄色も落ち着き、ざらめいた感覚は黄伊羅保の本歌ではないか、高台も深くガチリとして、う〜ん優品だなア、などと眺めつ、触りつしていると、後ろから、ガヤガサと坊主頭が頭をニュキっと出し、京都弁で「いっやあ、ほんまに、今日は、エー天気で良かったでスがなアー、やっ、これは奥様、先だっては、結構なモン、もろ〜て、えらいすんまへんどしたなア〜、オッ、これは黄伊羅保でんなア〜、すんまへん、あとで観せてもろてもよろしいでっかア〜、フーフー、そーでっかアー」だって。
なんやこの坊主っ、と京都弁で返してやりたいくらい調子のいい喋りと物腰。っと、あれ、この御仁、大徳寺茶の湯好きな数寄者禅僧、しかも某塔頭の主ではないか、3年前に三鷹の数寄者の茶事で遭遇し、彼は正客、拙僧は確か次客だった筈。
あのときは呑んだ呑んだ、ってなもんではない、預け徳利を三回取り替えて、やっと開放したくらい呑んべーだったなあ。
オッ、先方もハッと気づいたようだが、ここは数寄者紳士ということで、お互い目礼。しかしあのときの調子は相変わらずだ、脇には綺麗どころの御婦人を一人連れ添っているところもいかにもこの御仁らしい。
さて、かの数寄者禅僧、早速に水屋から出された赤茶碗をクウーっと飲み干し、ナデコデと抱き抱えるように茶碗の観察に余念がなく、京都弁で「これ、宗入でんなア、ええ具合に胴に箆が入って珍しいでエ、ええモンや〜、ほんまア〜、この赤の具合、なかなか見れへんでエ、さすがやでエ、蔵寂び屋だけやでエ、こんなん出せるンはアー」ったく、よく喋るなア〜、しかも矢鱈と褒め言葉が機関銃のように出てくるのを傍らで聞いてるとだんだん疲れてくる。が、的は得ている、しかも物の観方を知っている喋りには感心したものだし、巧者だ。ただし、本質を見抜いているか否かは別だが・・・・
続けて、何処かの、しょぼれた道具屋が入ってきて「やっ、これは和尚さん、京都から熱海くんだりまで、これは々有り難いことです、また御会いしましで御盛んなことです、はい合掌!」続けて「おッ、これは伊羅保、和尚さんのは宗入では、そこな綺麗な御婦人が抱えていらっしゃるのは織部ではないですか、うーん、この織部茶碗で馳走になりたいですネ〜」
なんだ、このおっさん、調子のいい方だなあ、しかし水屋から入ってくるだけあって、よく道具を知っているな、しかだな、想定外、急に回りが賑やかになったことだし、早々に退散だ、腰を上げようとすると、襖が開いて、「おっ、石山さん、どーも、あっ、これは御住職、今日はお越しいただいてありがとうございアス」と主催者の専務取締役がひょっこりと顔を出してきたものだ。
型どおりの挨拶を交わしたものの、横の住職がよく喋る「いっやあ〜、専務、水屋でこんなン、よろしいモン見せてモロたら、もう、本席ええんちゃう、はアー、いやア、こら、本席、楽しみやでエ〜、にしても、この黄伊羅保、ええなア〜、一級やあ、うん、えーでエ〜!」っと、ためを入れてくる。
横で聞いていた拙僧は辟易して聞くのもヤんなってきたものだから専務にこう言った「専務、黄伊羅保の綺麗寂びは透徹商ならでは、宗入の赤は、いかにも、ってところですね、如心斎の箱書ですか。それと織部、見込み深く、高台裾周りの削りは味わい深く、高台内も力強く絵も幾何学的で無造作だが、よく考えてますよネ」と要所を押さえて言ったものだが、なんかもう疲れてきた。
やっと、専務が、「席が、空きましたので、ササッどうぞ、中へ」と言ってくれたので、やっと開放されたかと思いきや住職も一緒だア、ア〜ア・・・・
なかに入ってみると三畳台目の床は、美しい筋切れ、これは一番イイとこどりの部分。釜は芦屋霰、霰も整然と、その粒も尖って逸品。
続いて茶碗は、青井戸、轆轤目も鮮やか、見込みがなんといって深く、五人前は点てられるとみたものだし、銘も春を予感させる、熱海の小高い山をバックに開催された茶事に相応しい。
でと、横では相変わらず御住職がその巧者ぶりを発揮してるようで、周りの御婦人輩はフンフン言いながら聞き入っている。どこの世界でもこのような希少な方がいるものだし、また必要なのかも知れないなと、感じ入り乍ら拙僧はスッと三畳台目茶室を後にしたのであった。
茶室を出ると、空気は澄んでおり、わずかに和んだ碧空にどこまでも拡がる海原が映え、心底に充足感が漂う。
そういえば、あの井戸茶碗に対峙していた水差しは、あれは南蛮縄簾、そう、侘び数寄者なら一度は手に入れたいものだし、拙僧としても最終的に絶対手中にしなければなるまいて。
それは素焼きではあるが全体として茶褐色から薄墨がかり、立ち上がりから口辺まで抑揚を保ちながらひろがりをみせる姿は得も言われず、たまらないものだ。縁があれば巡り々ってくるのだろうか、海原の遥かかなたのすこしくゆらいだ地平線を眺めながら拙僧の細い目に水差しが浮かぶ。
にしても、う〜ん、拙僧ならあの南蛮縄簾水差しには、茶碗は柿の蔕、いや、雨漏り茶碗、まてよ、春とくれば、彫三島だなア・・・と、拙僧の想像は、またしても時空を超えていく・・・あ〜、茶事をしたいなー。
とかなんとか気持ちの良い気分で園内を少しく散策し、上々気分で美味しい昼食と、わずか一合の酒を目指して拙僧は足早に点心席に向かっていったのであった。
その後の茶事(平成24年3月11日)にも和尚が神出鬼没します
いかがでしたか、茶の湯と数寄者の世界は。今後、当職の聖職である行政書士としてのキラリ日記を挟み乍ら思うが侭につづっていきたいとおもいますので楽しみにしていてください。

石山政義 法務・行政事務所

所長 石山政義 

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茶室(http://www13.ocn.ne.jp/~chakou/sub1.html

笠間日動美術館http://www.nichido-garo.co.jp/museum/exhibition_archive_0705.html

京都武徳殿(http://raku.city.kyoto.jp/m/sports/sisetu0035.html

鎌倉鶴岡八幡宮http://www.hachimangu.or.jp
鳩サブレの鎌倉豊島屋(http://www.hato.co.jp/index.html