鎌倉碧雲山房は雲襄亭主 石山政義による数寄者の時空遊泳その26

雲襄亭主石山政義の洞庭秋月亭における茶の湯にキラリその6(その5はこちらから)
於当山鎌倉碧雲山房 久しぶりの雨が降った翌朝、山内散歩でもしよっかな、と母屋石段を降りていくと、なんと紅葉が一葉、空中に舞っているではないか。おーっ、なんだろうと目を擦りながら近づいてみた。
じつは紅葉木の枝が先端と、左の植木、そして右の燈籠の三点確保で蜘蛛が巣を張ったのだ。これは一興ということでカメラに収めたのであった。にしても蜘蛛は瞬間、「こりゃ、ドえらいものが引っ掛かったもんだわいキューッ」という声を発した否かは分からないがニタリッとほくそ笑んだことであろうなあ、しかし、ぬか喜びとはこのことだ

ところで鎌倉の紅葉は漸く終わりを告げたようだ。ただ、当山鎌倉碧雲山房の、日があまり当たらないが木漏れ日が昼過ぎまで射す山の中腹の庭にある一部の背の高い楓は水平を基調に、鋭角で直線的な枝を垂らしながら庭の一部を占領しており最後の灯火を掲げている。
しかし、よくよく観察していると、日当たり抜群の楓はパッと色が染められ、あっというまにカサカサになって染まったあとの余韻がないのにくらべ、木漏れ日が射す程度のそれのほうは、より複雑で、青、黄、茜、そして赤、最後に薄だいだい色となってやがて萎んで散っていくから観応えがあり、拙僧としては感情の移入が何回も繰り返ことが出来る。そしていつものことながら色即是空、空即是色という言葉が蘇ってくる・・・・・
それと、想うのだが先に述べた、楓の枝の直線と鋭角さといふものは梅の木、ボケの木のそれと共通している。この広葉樹の場合は水平、そして下よりも上へときびきびと伸びていくが楓は水平から斜め下へと直角といふよりは緩やかな角度を描きながら気持ちよく伸び々としている。
当たり前といへばそれまでかもしれないが、しみじみ観賞していてふと想った次第。
さてと、ゴタクはこれくらいにして今回は間髪をいれず、早速に洞庭秋月亭における茶事の続きを・・・・そう、拙僧としてはつい先日、11月28日における居合いを翌日に控えた当雲襄亭での茶事の記録を忘れぬうちにアップせねばならんこともあることとて、後ろが詰まっておるので御座る。
で、茶事の記事は第一回の茶事ブログでも述べましたが、沢山ありまして、中国の名所である瀟湘(しょうしょう)八景に因んで1山市晴嵐、2漁村夕照、3遠浦帰帆、4瀟湘夜雨、5遠寺晩鐘、6洞庭秋月、7平沙落雁、8江天暮雪と八つの景色を拙僧が亭主、あるいは客として招かれた茶事におけるところの茶室を仮名称として利用させていただいている。
このうち瀟湘夜雨亭、洞庭秋月亭と、まだ二つしかアップしておらす、数多の茶事だの茶会だのの中からの抽出は結構楽しく気も早るものの、持ち前のズボラもひと一倍なるによって、そのへんの性格からくる矛盾との戦いたるや鋭い読者は先刻承知、ということでどうか御勘弁下されい。
では本題に。
洞庭秋月亭茶事亭主である拙僧は手水鉢にザザア〜、っと気持ちよく湯を張って、まずは自らを清めて迎付けよろしく、サラサラリとやりこなし、茶室に戻り、まずは一安心といったところ。
客人はそれを合図に正客を初め順々に詰客までそれぞれの想いを込めて身を清め、三畳台目に着座していく。
例によって、茶道口襖から聞き耳立てて(よからんこととは知りながら)、頃合いよしっ、ってことで拙僧は襖を左、右と開け、ズズズイっと点前座に膝を進めると、扇子を取出して早速正客から挨拶に取り掛かったものだ。
「いや、本日はア〜、」とかなんとか言い合いながら順々に交わして火蓋は切られる。挨拶が終わったところでサッサと初炭点。
結構、拙僧はこの初炭点前が好きなのだ、って釜を上げた瞬間、この半暗い世界で目の当たりにする炭の赤黒い明りは種火や如何にということもあるが、これから始まる茶事への期待と不安を一気に背負う瞬間でもあるわけで茶事のトップにくるこの初炭は三畳台目という小宇宙のなかで主客一体化が出来るか否かの鍵を握っていると言っても過言ではなく、最初に洗礼を受ける場面で、まさしく前哨戦と位置づけてよい。
さて、スラスラと得意の炭点前しながらの丁々発止はこれまた楽しく、巧者な正客との問答によっては亭主が一気にリズムに乗ることもあり、「あ、うん」の呼吸が出来たときはその日の茶事の成功は約束されたも同然。
でと、香を炉中に焚き、香合の蓋を閉めると同時に正客から「御亭主、香合の拝見を是非に」とくれば、軽く会釈しつつ拝見に出し、拙僧はそそくさと水屋に下がり、また出てきてはうんにゃもんにゃと道具の話題は尽きないのだが長話は禁物、水屋と調理室では今や遅し、ってことで、懐石の始まりを告げる。そう、「簡単ではありますが水屋で食事の用意をいたしましたのでどうかお召し上がりください、エへッ」と、エヘは余分だが、いつもやっていることなのだが何回やっても気恥ずかしいものではある。
喜三郎の粋な溜め塗り角切り膳に四つ椀と木の葉古染付向付けを置き合せ、向付けには三尊石氏が〆た平目の昆布〆を薄く五枚、絶妙に盛付ける。うーん、センスが輝くぞ。
この、木の葉古染付はゆったりした大きさで、地の白さに染付の蒼さが鮮やかで、綺麗に盛られた薄ピンクの平目の肉が映える。こんな平目を食せられる客人はしあわせものだなあ〜、とおもうくらい本日の平目は美しい。
持ち前の動きの速さと華麗さで末客まで膳を勧めたところで、それ、酒だ。燗鍋に常温酒を入れ、朱盃とともに持ち出すと客人もやっとこサ、定石どおり向付けに箸を進める。
正客曰く「いや、御亭主、この平目、美味いですねえ〜、〆方が絶妙です。やわらかさも丁度いい。それに包丁捌きも抜群に冴えています。よほどのかたが調理してるのですねえ」と褒めてくる。拙僧も嬉しいが、この声を厨房で黙々と立ち回っている三尊石氏に生で聞かせてあげたいものだ。
続いて煮物の出番、これは熱いうちに食するのが亭主と水屋に対する礼儀、といわんばかりに正客以下みなさん、フーヒャー言いながら平らげる。頃を見計らって一献、二献と傾ける酒も嬉しそうに注がれている。ウッケッケ、上々の滑り出しだな、なぞと拙僧はカッパみたいにほくそ笑む。
間を置いたところで強肴を一品、唐津の鉢で振舞ったところで、拙僧自慢の徳利と酒杯を五つ、即ち徳利は李朝堅手井戸、酒杯は、とくれば定番の古唐津、斑唐津、黄瀬戸六角、青磁馬上盃(元末明初)、萬暦四方染付盃ときたものだ。
皆、古美術が大好きで、たとえ酒をやらない輩であってもこの酒杯だけは別格なのだ。そう、軽いし、カバンや懐に入るし,何処に置いても邪魔にならず、拙僧なんぞ、必ず一つはカバンに忍ばせている。こんなことは酒杯が好きなものの礼儀といっても過言ではないのだ。況や友人と呑むときなんぞは二つから三つは準備するから、仕事の書類とゴチャマゼになったときは書類とか仕事七つ道具をはじき出してしまうから困ったものだ。
少し蛇足が過ぎたところで三畳茶室ももだいぶん宴たけなわになってきた。ここらでそろそろ飯だな、ってことで魯山人旧蔵の古備前俎板皿に竹皮で包んだ蒸餅飯と新香漬を盛り付け、化粧直しではないが徳利は約2合半入る、拙僧お気に入りの高麗青磁瓶に取り替え、さらに一献、三献と続く。
正客に勧められれば待ってましたとばかりに用意していた高麗青磁平盃を懐からスルッと取りい出して御流れをいただく。ここはグイッといきたいところだが、さすがに、はしたないんで、ちと上品にススッと三、四回にわけて呑み干していくのが拙僧の流儀。やがて山海料理の八寸が出たところでさらに一献出でれば、ここでグイッと一気に干してしまう。これすなわち、全ての料理が勧められ、亭主は次なる準備の為に水屋に下がるという合図でもあるわけだ。
先刻承知の正客はそこんところは敏感に察して席内の纏めにゆるりと引率していってることは例によって襖越しで読み取れるのだ、うん!出来た正客ではある、嬉しいものだし、これからはじまる濃茶は誠心誠意尽くさねばならぬなア、とおもわず武者震いがしたものだ。
つづく


いかがでしたか、茶の湯と数寄者の世界は。今後、当職の聖職である行政書士としてのキラリ日記を挟み乍ら思うが侭につづっていきたいとおもいますので楽しみにしていてください。



石山政義 法務・行政事務所

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茶の湯 裏千家http://www.urasenke.or.jp/index2.html

茶の湯 表千家http://www.omotesenke.jp/

根津美術館http://www.nezu-muse.or.jp/

鎌倉円覚寺http://www.engakuji.or.jp/index.shtml

笠間日動美術館http://www.nichido-garo.co.jp/museum/exhibition_archive_0705.html

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