鎌倉碧雲山房は雲襄亭主 石山政義による数寄者の時空遊泳その27

雲襄亭主石山政義の洞庭秋月亭における茶の湯にキラリその7(その6はこちらから)

於当山鎌倉碧雲山房 山中腹の石段から中庭を見遣る。
やや傾斜のある当山中腹から東南東に向けて斜めに位置し、燃えるような紅葉を放つ楓の一群。景勝地多々ありと雖も、おもてからは絶対観ることのできない鎌倉の秘所地、いや、隠れ里といっても過言ではない。


そして、その中庭には、紅葉の残影がビッシリと薄ピンクの絨毯の如く凄然と敷き詰められる。
踏みしめるたびに、カサ、ザザっと山中に響きわたり、自身が音に成りしか、はたまた音韻が自分になりしか、全てが自然のうちに溶け込んでいく・・・・

では、立て続けに続きをば。
懐石も済み、源太の美味しい饅頭をパクリとやっつけた客人等五名はいよクライマックスの濃茶に向けていい気分でなにやかにやと語りながら待合へと移動していく。このひとときがたまらなく楽しいのだ。
これは体験した人でないと分からないかもしれないのだが、美味しい懐石と名器、そしてホロ酔い加減で口中にはほんのりと饅頭の適切で品のよい甘さが香っている。待合にドカっと座れば眼前には師走の薄日に射された広葉樹と、その木漏れ日は整備された庭をやわらかに暖める。そして庭先には寂びた垣根を通してこじんまりした庵がある。
おそらく客連のこころのうちでは、う〜ん、本日の濃茶の道具や如何、茶杓は、茶入は・・・とか様々なる想像が浮かび、おもわず、ウケッケッ、なぞと気持ちが弾んでいることだろうて。
そう、蒼い濃茶を介して主客一体、とともに過ぎ去りし日々を、そしてやがて迎えんとする新たなる年を・・・感慨と希望に心ときめき、時空遊泳していることは創造に難しくない。
さて、客人のこころを攫み始めた拙僧は、というと、懐石道具を厨房に任せ、水屋では濃茶の準備に余念なく、黙々と、しかし素早く準備する。
三畳台目席での炉中の火相や誠に宜しく、点前正面、定位置に備前矢筈水差し、茶入れを置き合せ、水屋に戻り茶碗、茶杓、と確認するようにセットしていく。うーん、真新しい茶筅が清々しい。
頃合よろしッてことで梵鐘を約束通りの数を打つと、拙僧は再びにじり口から待合に向かい付けに・・・・
正客を筆頭に順々に蹲で再び身を清め、新たな気持ちでにじり口から茶室に消えていく、一人、二人・・・・。
で、水屋では準備万端、茶道口襖前で茶碗を置いて正座、沈思黙考。そして詰(五客目)のにじり口を「パタリ」と閉める音を合図に、一分から二分数え、襖を開け、いよいよ濃茶の火蓋は切って落とされたのだ。
茶碗を右、左、右、と持ち直し定位置に着座、水屋に下がり、再び建水、柄杓、そして本日の為に三尊石氏が自身の田舎で切ったという清々しい青竹の蓋置を持ち込んだところで襖をピタリと閉め、俗世間とはしばしおさらばだ。
三畳台目は物音一つせず、釜が演出するところの湯煙と松風の音だけが喧しい。
茶碗、茶入れをゆっくりと拙僧が膝と炉縁手前に置き合せ、茶入仕服の紐を解いでいく。いぶし銀の如く重厚感を漂わす紫地牡丹唐草紋金襴仕服が拙僧が動きにしたがい薄暗い三畳に生き物のように映える。
茶入れを清め、定位置に。茶碗を寄せ、矢筈水差しの真塗蓋をスーッ、スッと清め、釜の蓋を開け、柄杓によって湯が茶碗に注がれていく。「冬の釜湯は底湯をとるべし」という古の言葉を想いだす。
茶碗からあがってくる茶筅独特の甘青いにほいが全身に伝わっていく。ゆっくりと茶杓をとり、左に持った茶入れから神妙にそして確実に茶をすくっていくのだが、ここは持ち前の鍛錬された「序破急」が冴えわたる。
一杓、二杓・・・拙僧の流儀は茶の全てを茶杓によってすくいだすから少しく時間がかかる。が、客人連に誠意を尽くすにはこの方法がよいのだと自負しており、所謂、回し出しは決っしてしないのだ。
約三十秒、眼前には鮮やかなる蒼の茶が蓬莱山の如く綺麗に積み上げられていく。再び湯を底からすくい上げ、ゆるりと茶碗に注ぎ濃茶を練っていく。湯が注がれた瞬間、三畳の小宇宙を濃茶の甘くも緊張感のあるにほいが染めていく。
濃茶を点ててる間もさることながら、なんといっても点てあがってその茶筅をすくい上げた瞬間は全身に緊張が走る。そう、本日の濃茶の点て具合や如何に、もしか、湯が足りなかったのでは・・、点て方がゆるくないか・・そして無念無想になれたのか・・・様々なおもいが頭をよぎっていく。
そう、懐石から始まり、酒だの饅頭だの、なんだのと、約二時間を回遊してきたのは誠にこの濃茶を主客共にする為であるのだ。しかし何回点ててもスラスラできない、況や無の境地においてをや、っと痛感することの繰り返しだが、今宵は持ち前の根性と誠意、それに無神経で点てきった所存であったのだが、ふウ〜、道は遠いなあ・・・
なんだかんだとブツブツ思案し乍らも、茶は点てあがり、そっと炉縁右の道具畳へ、重からず軽からず、そろり、スっ、と置く。そして懐から袱紗を取り出し、茶碗右へ添える。
その瞬間、正客以下四名の眼と全神経は一斉に、この懇情の茶碗に向けられ、やや間をおいて正客が茶碗、袱紗、と取り込んで主客総礼。
正客は茶碗を正面に受け、目を閉じ、一、二秒黙考しただろうか、随分長い時のように感じられたものだ・・・・やがて、おもいをきったようにゆっくりと口元へ茶碗を傾けていったのであった。

つづく
いかがでしたか、茶の湯と数寄者の世界は。今後、当職の聖職である行政書士としてのキラリ日記を挟み乍ら思うが侭につづっていきたいとおもいますので楽しみにしていてください。



石山政義 法務・行政事務所

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茶の湯 表千家http://www.omotesenke.jp/

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