数寄者石山政義の時空遊泳 その74

碧雲山房の今年の紅葉はこれが見納めです
しかし忘年会は続くヨ、何処までも・・・・・辛い、ってゆーかア〜、やっぱ愉しいー!
では、数あるうちから直近をひとつ語ってみたいと存じますンで
日本橋高島屋の脇道に入ったところにある、天ぷら「八つ花」でのおはなし
この日の拙僧の御相手は某大手上場企業の部長
この御仁、学生時代から山で鳴らした根っからの山岳人、よって朴訥このうえないのが好ましい
拙僧も負けないくらいの山岳人を自称してるが話を聞いてるうちに彼のが二、三枚上をいくから凄い
エベレスト山塊周辺の山々、南米アコンカグアとかを学生時代にやってるってンだから
そりゃア貴重な御話しを聞き乍らの天ぷらつっつきサ
にしてもここの天ぷらは美味しい!
まずは付き出し、この店独特の絶妙な歯ざわりと甘さの塩辛を肴に星印のサッポロ〜、でググ〜!
続いて向付け、そう、この季節はなんといっても平目に甘海老、隅のほうに縁側が三切れってのも嬉しい
こうなると冷酒、っと、いきたいとこだがここは逸る気持ちを押えて取り敢えず熱燗で舌鼓
オっと、仕事のはなしをせねば・・・ホントの呑んべと確信されてはマズイ
ってことで付け足しに今年の仕事総括、整理整頓と来年の抱負を、しかし長っ話は禁物
一番大事部分を素早く且つ印象深く、しかしサラリと片付けちまうのは拙僧の得意とするところ
さて、タイミングよく、カウンタ内の主人「はア〜い、揚がりましたでございー」と、とても72歳とはおもえない声
一発目はさきほどまで剥いでいた天然車海老だ。続いて季節の野菜が数点
ここで冷酒を懇願、ママさ〜ンと呼べば「アア〜イ〜!石山さあ〜ン、待ってましたですウ〜」と
このママさんも若い、てゆーかア、精神年齢が、っちゃ失礼だが花がある、ってゆーのかなア、う〜む、品性のある、能面でいうところのちょっと年重の熊野(ゆや)とか羽衣に使用する増女ってとこかな!
むかしはかなりの美人であったことは想像に難しくはないこと
ま、いいや、彼女がチョイスしてきたのはまずは緑川、続いて八海山の名酒
天ぷらは再び海に還って烏賊、山の幸の銀杏、蓮根、そして車海老がもう一本 
10分程間を置いて貝柱、が三つ。これがまたコリコリして美味しい
落ち着いたところで穴子、ホクホクサクサクで独特のほんのり甘さが伝わってくる
隣の部長は?って、独特の試行錯誤スタイルでなにやらブツブツ言っちゃ食べてサ、なんか借りてきた黒白のたま猫みたい
やっぱ、旨いンだろーなアー、などと勝手に推測するのだが真っ黒な顔で天井向いては天ぷらやってるからわからない
場持たせに再び山のおはなしを向ける
と、彼が社会人になってまもなくの大学後輩の遭難救助時の様相を結構リアルに話すのだった。
小さな声で、どこかで小さな蚊が飛んでるように淡々と・・・・・
そういえば昔、拙僧が知遇を得た著名な山岳人達も呑んで話すときは大抵こんな感じだったなア〜
拙僧は、って仕事は要点押さえ、実直に且つ素早く片付けて無駄話一切なし、呑めば談論風発の阿阿大笑サ
さてと、見渡せば10人ばかりのカウンターは誰も居なくなり、2階の座敷も先程、ドッと帰って我々2人に・・・
酒はいよいよ拙僧の大好きな〆張鶴でそれこそ最後の〆
これを合図に天茶、天丼の選択の要請で、さすがに2人、小天丼を所望
これに添えられる味噌汁にはデカい蛤が二つ、ひゃあー、たまらなく美味しい
綺麗に食べたあとはデザート、なんだったけかなア〜、洋梨か、う〜ん思い出さない、ま、いいや
時計を見遣れば10時、御主人は厨房で一服の筈(おそらくチビリっと呑んでるかも)
ママさんと個性豊か過ぎる?一味2人は、っといえばニヤニヤと我々を見守ってるのもいつものデン
終店間際の独特な雰囲気、相手にとっちゃ迷惑かもしれないが、シンとしちゃってサ、結構イイもんだ
そーいえば部長、ていえば相変わらず天井とか柱を見つめ乍ら腕組みして首を傾いではブツブツ・・・・・・
仕事中もそんなンかなア〜、などど少しく心配になってきたが同じ山屋だ、大丈夫でしょう、と一抹不安を払拭!
頃合よし、てことで素早く会計して身支度をすれば一派も呼応して動いていく
出てきた御主人、案の定少し赤ら顔で「ありがとオーござイ〜!年末は29日まで営業ですウ〜」っと
そしてママさん一派も「いしやまさ〜ん、年内あと一度おいでなさいますよーにイ〜」と合唱ならぬ合掌
なんて言われちゃア、単純な面も沢山ある拙僧のこと、ハイハイニコニコと頷いて店方を喜悦させるのも得意なのだ
さて、気分も上々、12月師走の日本橋表通りをフラフラと人ごみに混ざりながら東京駅へ向かう二人なのであった

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